3月26日に開幕予定だったアメリカのメジャーリーグは少なくとも2週間延期されることになった。新型コロナウイルスへの対応ばかりに注目が集まる中、今季から導入予定の「新ルール」についてはあまり大きく報道されていない。それがスリーバッター・ミニマムだ。
簡単に説明すると、「登板したピッチャーは、(故障などを除いて)最低でも3人の打者と対戦しなければならない」というもの。
オープン戦ではペナントレース本番を意識した選手起用が目立ちましたが、周囲からは「筒香、秋山、大谷の日本人メジャーリーガーには大きなプラスになるのでは?」との声も出始めた。
「昨季、試合終盤で大谷翔平が左打席に立つと、ワンポイント・リリーバーが投入される場面が何度も見られました。大谷も対戦の途中で打席を外すなどし、打ちにくそうにしていました」(特派記者)
ワンポイント・リリーバーといえば、左投手が多く、変則的な投球モーションやちょっとヘンな曲がり方をする変化球を持つタイプばかりだ。大谷が打席を外すのは、その変則的なモーションへのタイミングの取り方や、あまり見たことのない変化球の軌道について考えるため。他のバッターも同様であり、ここに「試合時間の短縮」を目指すコミッショナーのロブ・マンフレンド氏の“言い分”があるわけだ。
「大谷はもちろん、筒香、秋山も左ピッチャーを苦にするタイプではありません」(前出・特派記者)
しかし、侍ジャパンのメンバーの大半は、国際試合で初顔合わせのピッチャーに苦しみ、2打席以降でヒットを放ってきた。試合終盤、“一人必殺”とばかりに左の変則投手をぶつける継投リレーに、大谷たち左のスラッガーが苦しむ場面は少なくなりそうだ。ルール変更は、大谷、筒香、秋山の打撃成績アップにつながるだろう。
スリーバッター・ミニマムについて、こんな情報も聞かれた。
「現時点で、日本のプロ野球界ではこのルール変更の受け入れには批判的な意見が多いんです。故・野村克也氏が阪神監督時代に見せた『遠山−葛西−遠山』の継投策は、今でもファンの間では有名ですし、全てアメリカに合わせる必要はない、と。国際試合でのスリーバッター・ミニマムの導入は避けられそうにありませんが……」(球界関係者)
ムキムキ化が話題になった大谷ら日本人スラッガーが“一人必殺”で生きてきた変則投手たちを打ち崩し、タイトルでも獲得しようものなら、今度は彼ら投手陣が働き場所を求めて日本球界に乗り込んでくるかもしれない。ルール変更が日本球界を盛り上げることにもつながりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)