透析は合わない人もいるんですが、僕には合っていたようでラッキーでした。透析に慣れた今は何でも食べられるし、めちゃくちゃ快調。2週間に1回ほど血液検査をやるのですが、先生からは「悪い数値はない」って言われていますからね。
僕は、透析が終わった後はすぐ仕事をしています。その足で現場に行って、営業を30分やったりするんです。例えば火曜日に透析が終わって、次の透析まで2日しか空けられないですが、水・木で地方出張もやります。金曜日の午前中に帰ってきて、午後に透析です。6年間で、このパターンは何回かありましたね。しかも透析のクリニックは、全国にいっぱいあるんですよ。「こんな田舎にあるの?」っていうくらい。だから今は、営業の話が来たら「いや、もう旅行だってできますよ」って言うほどです(笑)。
目が見えていないので、いろんな道を歩いて、仕事に行くのはやっぱり大変。段差もありますしね。杖を持って、必ず人の肩を借りています。男性だと「随分と仲がいいですね」って見られますけど(笑)、女性だとちゃんとヘルパーに見えるので、空港に行くと優先して入れてくれますね。
もちろん、慣れていないステージはそれなりに苦労します。長年ステージに立っている新宿の「そっくり館キサラ」ならば、どのくらいの広さがあるかわかっているから楽ですけど、初めてのステージだと基本的にはリハーサルやって、「この辺まではお客さんいますよ」とか、1周して広さを覚えたり、バミリ(出演者の立ち位置を示す印)をでっかく貼ってもらっていますね。勘でやっていますが、「本当に見えてないんですか?」って、みんなから言われます(笑)。
つい先日、おぼんこぼんのこぼんさんの娘さんの結婚式でもショーをやったのですが、リハーサルはなくて、本当に勘だけでしたね。でもね、怖くないんですよ。見えてないので、何も緊張しない(笑)。見えないから緊張しないってのは、いいことかもしれませんね。前は一部のお客さんが笑ってないなとか、ちょっと気にしたりしていましたから。
逆に見えない分、反応がお客さんの笑い声しかないわけです。笑いを取らないと、1人ぼっちでやってるみたいな感じになるから、絶対にウケるように、ネタをしっかり組み立てて、より濃密な30分をお送りできるようにと考えるようになりました。
濱田祐太郎さん(盲目の漫談家、R-1ぐらんぷり2018優勝者)の漫談を見ていると、彼はトークで笑いにしているけれど、果たして、僕はあそこまでできているかなと思ったりします。例えば毎回、リハーサルでステージの広さを歩数で測っているとか、ここに人がいる体(てい)でやっているとか、そういう舞台の裏話をお客さんにわかってもらったほうが面白いっちゃ面白いんでしょうけどね。そういう講演会とかやってみたいですね。
実際、うちの社長に「せっかくそういう病気になって、経験ができる人も少ないわけだから、それをお笑いに変えて、同じ苦労をしている人に希望を持ってもらえるように頑張ったら」と言ってもらって、確かにその通りだなと。やっぱり僕のように人工透析だとか視界が悪いと、ご家族も含め、悩んでいる方も多くいると思います。そういう方々の前で講演をして、ものまねショーもやるとか、新しいスタイルに挑戦してみたいですね。
最後に、これは病気の人あるあるだと思いますが、「体調、大丈夫?」って聞かないでくださいね。もちろん気を遣ってくれているのはわかっているんですけど、大丈夫ですから。それはもう言わないでほしいなって思いますね。
コージー冨田 1967年2月24日生まれ。愛知県出身。タモリのものまねで注目され、笑福亭鶴瓶、松村邦洋、石橋貴明、千原ジュニア、鈴木雅之ら、約70人のものまねを得意とする。
*週刊アサヒ芸能4月10日号掲載