イギリスを揺るがしているヘンリー王子の王室離脱問題。日本でも各局の情報番組でこの問題が取り上げられ、今後は王室関連のすべての職務から退くこと、殿下(HRH)の称号を使わなくなること、そして年間3億円にのぼる王室助成金を受け取らないことなどが報じられている。
なかでも注目されるのは称号の扱いだ。そもそも殿下(His Royal Highness)とはどんな称号なのだろうか。
「国王ジョージ5世が発布した『1917年の勅許状』により、殿下を名乗れるのは国王か女王の子女、ならびに男系の子孫と定められました。ほかにも細かい規定があるものの、エリザベス女王の孫にあたるヘンリー王子を含めた20人が殿下・妃殿下を名乗っており、イギリスでは“狭義の王族”とされています。女王の娘であるアン王女の家族、女王の妹で故マーガレット王女の家族、そして女王のいとこらも“広義の王族”とみなされ、王室関連の行事に参加することもありますが、殿下や妃殿下の称号を与えられることはありません」(週刊誌記者)
つまりヘンリー王子が王室を離脱する場合、殿下の称号が失われるとともに“狭義の王族”から外れることになる。そうなると日本人の感覚では“王子”でもなくなってしまうように思えるが、実際はどうなのだろうか?
「ヘンリー王子は現在、王位継承権第6位で、この序列は王室離脱後も変わりません。また王子(Prince)という呼び名も同様に失われず、今後も『ヘンリー王子』、英語圏では『プリンス・ハリー』(Prince Harry)と呼ばれ続けることでしょう。王室を離脱しても女王の孫であることに変わりはありませんし、『王子』は称号というよりは呼び名(スタイル)として認識されています。ヘンリー王子の母親である故ダイアナ妃も、チャールズ皇太子との離婚後に妃殿下の称号は奪われたものの、『プリンセス・オブ・ウェールズ』の呼び名は変わらず使い続けていました」(前出・週刊誌記者)
そのほか、サセックス公爵という爵位については引き続き保持するため、王室を離脱しても貴族の一員ではあり続けるという。それゆえ王室離脱後も貴族の立場で公式行事に列席することはありそうだが、席次は大幅に下がってしまうというのだ。
「イギリスの公式行事では席次が厳密に定められており、王室メンバーは最上位に位置します。その次にケント公ら広義の王族が連なり、次いでイングランド国教会のトップであるカンタベリー大主教。そして首相や国会議長、最高裁判所長官といった三権の長が連なります。さらに大使やイギリス連邦諸国に派遣される高等弁務官、国務大臣でもある式部卿や紋章院総裁らが続き、その次が公爵です。なおヘンリー王子のような王族貴族は、イングランド貴族やスコットランド貴族より下の序列となる“連合王国貴族”であり、席次の面では他の貴族より下になるはず。今後は王位継承権第6位の人物が、数十人もの公爵の下に並ぶという光景を目にすることになりそうです」(前出・週刊誌記者)
たとえイギリス国内での序列は大幅に下がっても、世界からは王室離脱前と変わらずに熱い注目を集め続けることになりそうだ。
(北野大知)