フィギュアスケート・グランプリシリーズ 第6戦(NHK杯)は、リンク外にも注目が集まっていた。前大会のカナダ杯で羽生結弦が放った“ひと言”に、世界中のメディアが関心を寄せていたからだ。
「初日、羽生のショートプログラムの演技が始まると、他選手付のコーチ、会場関係者までが手を休め、見入っています。他選手も同様で、羽生の演技を見て勉強していました」(体育協会詰め記者)
しかし、羽生の演技にウットリしてしまうのは、いつもの光景。これまでにもあったことだ。今回、世界中のメディアが注目しているのは、ロシア勢、それも女子選手との接点だ。カナダ大会後、羽生は「トルソワ、すごい!」と発言し、それが大きく取り上げられていた。
「羽生は海外メディアの前でも、ロシアのアレクサンドラ・トルソワの演技を絶賛していました。言うまでもなく、女子で4回転を連発するトルソワの才能はすでに世界中が認めていますが、羽生が『スゴイ』と発言したことでさらに注目度が高まっています」(同前)
それだけではない。トルソワ以外の10代のロシア女子選手たちが、カナダ大会以降、公開練習中の合間を縫って羽生のもとに行き、挨拶をしている。羽生も妹のような年齢の彼女たちと楽しそうに談笑し、記念撮影のリクエストにも応じている。
海外メディアはそんなショットを逃すまいとし、リンク外にもカメラを向けていたのだ。
「羽生はロシアメディアの単独取材に応じ、トルソワたちのことについてコメントしていました。同じくシニアデビューしたばかりのシェルバコワ、コストルナヤの名前を挙げ、さらに、ジュニアクラスの14歳カニシェワや、13歳のワリエワらの才能についても語っています」(特派記者)
NHK杯では目立ったコンタクトはなかったが、羽生はロシア女子勢のお手本となっており、見方を変えれば、羽生がロシア勢の台頭に心底驚いているということにもなる。
女子フィギュアは「4回転時代」に突入したと言われるが、羽生とロシア勢の接近は、双方にとって起爆剤となりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)