10月28日からタクシーの「事前確定運賃」がスタートした。
配車アプリを使って行きたい先を設定すると、タクシーに乗る前に既に運賃が確定するので、「同じところをグルグル回って高い料金を支払わされた」「到達直前にメーターが上がって損をした」……などといったよくある不満や苦情はこれでなくなる。
制度は、国土交通省が昨年から実証実験を重ねたところ、メーターと支払う料金の乖離率が0.6%に収まったため導入に至った。最初の実施では、S.Ride、Japan Taxi、スマたく、MOVのアプリで、約200社のタクシー会社・約2万車両が対応。札幌・東京・横浜・名古屋・大阪・京都などの27都市部で利用可能だ。
2009年にアメリカでUberが誕生して以来、配車アプリに参入が相次ぎ、だんだんと便利になるタクシー利用だが、今回の事前確定運賃は大きな動きのまだ入り口に過ぎないという。
「今回の事前確定運賃は、複数の交通機関を一括して利用・決済するMaaS(Mobility as a Service=マース)につながるものです。マースは、これまでの電車やバス、タクシーといった従来の交通手段にシェアリングを統合したもので、自動運転やAI、オープンデータなどが掛け合わされた『次世代移動サービス』と呼ばれる。『100年に1度のモビリティ革命』と言われ、シンクタンクが弾き出した試算では、2030年で国内6.3兆円、全世界では2050年までに900兆円の市場規模に達すると言われています」(経済ジャーナリスト)
世界規模で言えば、砂漠地帯のらくだでの移動や、渡し船、カヌーなどの移動も一括サービスに接続可能で、要はどんな移動手段を使おうが、行きたい先をアプリに入力すれば、かかる時間や値段がすぐさま分かり、支払いも1回きりで済むというものだ。海外で外国語で書かれた路線図を前に悪戦苦闘なんてこともなくなり、なんとも便利なのだ。
このマース、トヨタとソフトバンクの合弁会社のモネ・テクノロジーズや三井不動産がフィンランドの企業と組んだWhimなどが先行して取り組んでおり、国内では2020年からサービスがスタート予定だ。
事前確定運賃スタートでマースを視野に入れた動きも始まった。JR東日本はS.Rideを運営するみんなのタクシーとマース領域での提携を発表、互いのアプリを連動させて鉄道とタクシー双方の利便性を高めるとした。また同時に、NTTドコモ、KDDIとも提携を結んだ。
(猫間滋)