現在、東京や大阪などの大都市圏だけでなく地方都市や観光地などでも起きている深刻なタクシー不足。主要駅では駅のタクシー乗り場に客の行列ができ、電話やアプリで手配しようにも、かなり待たされることが多くなくなった。タクシー業界にとってはうれしい悲鳴とも言えそうだが、そんな単純な問題ではないようだ。
「新型コロナの影響で各タクシー会社の業績が大幅に悪化。22年だけで30社近くが倒産しています。それ以外でも、人員削減を行ったことで、深刻なドライバー不足に陥り、需要が回復しても対応できずにいるんです」(タクシー業界紙記者)
ただし、運転手の減少そのものはコロナ禍になって急に始まった話ではない。一般社団法人全国タクシー・ハイヤー連合会によると、法人タクシー運転手の数がもっとも多かったのは04年度の38万1943人。その後、00年代後半から一気に減少に転じ、21年度時点では24万1727人。実は、この20年でタクシードライバーは14万人弱も減っていたのだ。
「そのきっかとなったのが日本にも深刻な影響を及ぼした08年のリーマンショックです。これを境に全国のタクシー利用者の延べ人数は年間20億人を割り込むようになり、コロナ禍前の19年度は約13億人。コロナ禍が明けた現在はこれに近い水準に回復していると思われますが、長期的に見れば利用者減少に歯止めがかからない状況となっています」(同)
とはいえ、病院への通院にタクシーを使う高齢者も多く、利用できないと困る人が多いのも事実。だが、運転手や車両を増やすことに消極的な事業者が少なくないという。
「利用者からはウーバーなどのライドシェアサービスの本格解禁を求める声が高まっていますが、タクシー業界は反対の姿勢を崩しません。今後、インバウンドによるタクシー需要はさらに増える見込みですし、そうなれば状況は今よりも悪化するのは明らかです」(同)
もはやタクシーは簡単につかまる乗り物ではなくなりつつあるようだ。
(高島昌俊)