10月14日、高校1年の女子生徒が、高知市内の県道で車とぶつかりそうになって転倒し、重傷を負う事故が発生。車は急停止したため接触事故は免れたが、避けようとした女子生徒は道路上に投げ出されて顔などを打って出血。うずくまる女子生徒にドライバーの高齢男性は謝罪し、千円札を2枚渡した。
その後、女子生徒は男性ドライバーが病院に連れて行ってくれるものと思ったが、車は彼女を置いて走り去っていったという。診断の結果、女子生徒は鼻や目の奥の骨を折り、約2週間の入院を余儀なくされたが、男性ドライバーの特定にはいまだ至っていない。警察は男の行方を追っているという。
この事件についてネット上では《接触してなくても相手側が転倒して負傷したら賠償責任や刑事責任が問われるのか…》《2千円を渡して去ったドライバーはひき逃げで裁かれるのか?》といったコメントが相次いだ。
今回の高知の事件は一刻も早い被害者の回復と事件の解明が望まれるが、交通事故に詳しい弁護士は、非接触事故でも“ひき逃げ”が成立する可能性があると指摘する。
「たとえ人と車が接触していなくても、ひき逃げが成立するケースはあります。たとえば、車が急ブレーキをかけたはずみで人が転倒して負傷するなど、車の動きと負傷に因果関係があり、運転手が自分の責任を認識しながら救護措置を取らずに逃げた場合です。その一方で、別な問題も危惧されています。今回高知市で起きた事故の報道によって、非接触事故でも当て逃げになる可能性があることが広く知れ渡ったので、今後は“非接触系“の当たり屋が横行する危険性も指摘されているのです」
非接触事故を装った当たり屋はすでに存在するという。闇稼業に詳しいジャーナリストは手口についてこう解説する。
「やり方としては、車がすれ違う際に元々壊れているメガネや腕時計、スマホなどをわざと落として『壊れたから弁償してほしい』と示談交渉に持ち込むんです。ポイントは物損の弁償だけを要求し、額は数千円程度で済ませること。なぜなら、その場で支払えるような少額にとどめれば、ドライバーは『警察沙汰になるよりかはマシ…』と思って支払うケースが多いからだそうです。特に狙われやすいのは高齢女性ドライバー。路地など人目のつかない道で待ち伏せ、車が現れたところで驚いて倒れたフリをして物を落とせば大抵の車は停止してくれます」
当たり屋のターゲットは一般のドライバーに限らない。
「タクシーもよくカモにされるようです。当たり屋は協力者とコンビを組み、どちからが乗客を装って路地へ誘い込み、もう1人が先ほどと同じように転倒して物を落とす。タクシードライバーとしては、警察や会社に連絡されて営業停止など面倒事に発展するのは極力避けたい。乗客役も『運転手さんが悪いんだから払ったほうがいい。俺は急いでいるからさっさと払ってくれ』とせかします。もしドライバーが本部や警察に連絡するといっても、乗客役は『もういい!じゃあ俺はここで降ろしてくれ!』とキレたフリをして車を降りて逃げれば済みますからね」
当たり屋に狙われるリスク、自分が当て逃げ犯になるリスクがある以上、運転者にとってドライブレコーダーは必須アイテムのようだ。とはいえ、接触か非接触にかかわらず、事故で自転車や歩行者を転倒・負傷させてしまった場合は、警察に通報したほうが賢明かもしれない。
(橋爪けいすけ)