緊迫した場面で飛び出すミスほど痛いものはない。目立たないプレーでも、数字がワーストナインを証明していた。
伊原氏は牧原大成(27) =ソフトバンク= の盗塁成功率の低さに驚きを隠さない。
「成功率4割3分4厘? 半分以上失敗ですよ。もってのほかだよね。これは監督のミス。相手バッテリーの守備力と牧原の脚力を計算していない。ゲームの展開によって『セーフになれば儲けもの』みたいな走らせ方をしないと、こんな数字にはならないでしょう。広島・西川龍馬(24)もひどい。私だったら、こんな低い成功率では走らせませんよ」
うるさい走者を殺すのが捕手の仕事だが、それ以前に問題なのがパスボールだ。ランキングを見てみると、両リーグを通じてダントツは、12回を記録した西武・森友哉(24)である。
「辻監督も、炭谷が抜けて森の守備がいちばん心配だと言っていました。まあ、そのとおりです。ワイルドピッチとパスボールの差は微妙なのですが、森のキャッチングがヘタなのは間違いのない事実。それと西武の投手は、なぜか逆球が多いですからね」(金村氏)
ノーバウンドで捕手が捕れる範囲内とされる場合は「パスボール」。バウンドした投球と捕手が届かないところへ投げてしまった場合は、ほぼ「ワイルドピッチ」と記録される。
森と甲斐拓也(26)=ソフトバンク=の捕逸の数を見比べた角氏はこう指摘する。
「恐らくサイン間違いでしょう。実態はわからないですけど、森の場合はまっすぐのサインを出しているつもりで、カーブのサインを出してる可能性がある(笑)。まあ、いい捕手は投手を信用してないもんですよ。必ずしも構えたところに投げてくると思ってないし、直球とサインを出してもカーブが来るかもしれないと思ってるんですよ。なので、この2人は捕手としてまだ一流とは言えないのかもしれない。投手を信用しすぎてるからね。バカ正直なんでしょう。昔、金田さんは口を開けたらカーブ、閉じたら直球というサインを出していたという話を聞きましたけど(笑)」
セのワーストナイン捕手部門は、炭谷の加入で出場機会が減った小林誠司(30)が選ばれた。
「何をしてるんだ、お前は!と思うよね。3連戦だったら2試合は出なきゃダメでしょう。炭谷を獲ったのは小林を成長させるためだからね。昔から巨人は正捕手を育てるために、サブの捕手を獲得してきたんですよ。山倉さんの時に近鉄から有田さんを獲ったり。それは正捕手に危機感を与えるため。でも、小林にはまったく危機感がない。打撃に頭が行きすぎていますが、捕手は基本、リードが仕事です。自分の欲しい球ばかり要求して、全然、打者を見る余裕がなかった」(角氏)
扇の要となる捕手が機能しなければ、接戦をものにするのは難しい。伊原氏は「1点差負けゲーム」についてこう分析する。
「1点差負け試合数が多いチームは中継ぎ陣が弱いということでしょう。楽天は接戦に弱いというデータが出てますが、平石監督はスクイズしたりして何とかしようという姿勢が見えた。それでも、同点から勝ち越せない。抑えの松井裕樹(23)もよくやられていましたからね。同点で登板させられたり、回またぎで点を取られるというパターンが多かったと思います」
ならば、監督の采配で1点差ゲームをものにすることはできないのだろうか。
「年間、何試合かは監督の采配で勝てることもあるでしょうが、ほんの数試合だと思います。今年の西武の場合、辻には悪いけど、二線級のピッチャーが出てきたら、黙ってたってバッカーン、バッカーンって打ってくれるんだから、采配のしようがない。でも、さすがに10点差以上で負けるのはいかんね。監督としてはマスコミにコメントするのが精いっぱい。『ファンの皆様にこんなゲームをお見せして、たいへん申し訳ない』と言うしかない。まあ、それを選手が次の日に新聞で見て、どう受け止めるかですよ」(伊原氏)
来季、ワーストナインの巻き返しに期待したい。