ミャンマー巨大地震、タイのSNSで広がる不謹慎な「呪い説」とは

 現地時間の3月28日午後1時前、ミャンマー中部内陸でマグニチュード7.7の地震が発生。米地質調査所(USGS)によると、震源地はザガイン市の北西16キロメートルで、震源の深さは10キロメートル。死者数は1700人とも伝えられている。ただ、内乱が続くミャンマーではもともと政府によるインターネット遮断や通信の途絶などもあり、正確な集計が行われていないという。

「2021年のクーデターで軍事政権が権力を握って以来、ミャンマーではいまだ政治的混乱が続き、ほぼすべてのメディアが軍事政権に掌握されています。そのため、この地震被害に関しても現地の情報を入手することが極めて難しい状況にあり、被害の拡大が懸念されています」(国際部記者)

 ミャンマーでは2012年11月にマグニチュード6クラスの地震が頻発している。というのも周辺には、インドプレートのほかユーラシアプレート、スンダプレート、さらにビルマプレートなど複数の地殻プレートが接しており、かねてから地震危険国とされてきた。今回地震が発生したミャンマー第2の都市と言われるマンダレー近隣地域は、ちょうどプレートの境界がある「サガイン断層」の上に位置するとされるが、

「今回の地震は1912年に発生した推定M7.9とされた『ビルマ地震』以来、実に113年ぶりの最大規模だと言われています。この地震発生から12分後には、続けてM6.4の余震があり、それがダメ押しとなって甚大な被害が広がったようです」(同)

 1000キロ離れたバンコクまで及んだこの大規模地震に対し、「過去100年で1番の強震」と表現したタイのプムタム副首相だが、実はそんなタイのSNS上で、ある不謹慎な都市伝説がまことしやかに囁かれているというのだ。

「それが、地震の原因はある一家にとりついた呪いでは、というもので、やり玉に挙がっているのが、ぺトンタン現タイ首相ほか、これまでにも首相を輩出してきた『シナワット一族』(タイ語でチナワット)なんです。一族は旧華僑である丘春盛に始まる豪族で、一族の中から2001年から06年までタイの首相を務めたタクシン・シナワット、11年に第36代首相としてタイ史上初の女性首相となったインラック・シナワットを輩出するなど、タイの政界や官界、財界、軍部などに対しても絶大な影響力を誇示してきました。そんなこともあり、タイの人々にとって一族の存在はある意味憧れである一方、妬みの対象でもある。今回の呪い説も、そんなことで飛び出した都市伝説と言えるでしょう」(同)

 今回SNS上で蔓延している都市伝説によれば、04年12月のスマトラ島沖地震の際、首相の座にあったのはタクシン氏で、11年に発生したタイの58県を巻き込みんだ大洪水の際は、インラック氏が首相だった。そして今回の地震は、またも一族の一人、ぺトンタン・シナワット氏が首相を務めているときに発生した。というわけで、「一族の呪いだ」とこじつけたというわけだが、毎度のことながら、多くの被害が出ている中、このテのデマや噂が飛び交うこと自体、不謹慎極まりない。

 いまだ、正確な死傷者数が明らかになっていない中、一刻も早い人命救助を願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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