昨年2月以降、テレビやネットで取り上げられない日はないウクライナ戦争のニュース。だが、それによってメディア報道の機会が激減し、人々の記憶から忘れ去られようとしている地域もある。そのひとつがミャンマーだ。
21年2月、軍部主導によるクーデターが発生し、与党・国民民主連盟の党首で実質的な政権トップだったアウンサンスーチー氏が拘束。これに反発する民衆たちが同国最大の都市ヤンゴンをはじめ、各地で抗議デモを行うも治安部隊がこれを弾圧。市民に多数の犠牲者が出て、国際社会から非難されていた。
昨年7月には現地でデモ隊を撮影していたドキュメンタリー作家の久保田徹氏がミャンマー当局に逮捕。11月に恩赦によって釈放されたが、禁固10年の判決を受けている。普段ならトップニュースになってもおかしくない。実際、10年に同国で拘束されたジャーナリストでAPF通信代表の山路徹氏は、わずか3日で解放されたが新聞・テレビともに比べ物にならないほど大きな扱いだった。
現地での取材経験を持つ大手紙記者は、この扱いの差について次のように語る。
「軍事政権が厳しい報道規制を敷いており、常に監視されているので取材活動が難しく情報が得られないんです。また、報道の優先順位の問題もある。ウクライナ戦争の相手は国連常任理事国である大国ロシアですし、日本の隣国でもある。多数の人命が失われ、世界のエネルギーや食糧問題も絡み、米国・EUとの代理戦争という側面もあってニュースバリューが高い」(大手紙記者)
では、現在ミャンマーはいったいどのような状況になっているのか?
「100以上ある少数民族は独自の武装勢力を持ち、事実上の内戦状態が続いています。今月11日には北部ザガイン地区でミャンマー国軍が民主化を求める『国民統一政府(NUG)』の事務所開所式を狙って空爆し、160人以上の犠牲者が出ています」(前出・ジャーナリスト)
国際社会やメディアは、もう少しミャンマーに目を向けたほうがよさそうだ。