18日のビデオ演説で「我が軍は一歩ずつ前進している」として、戦果を焦らず粛々と作戦を実行していく姿勢を示したウクライナのゼレンスキー大統領。翌19日にはマリャル国防次官が、ウクライナ軍が南部ザポリージャ州ピャティハトキなど8つの集落を解放したと発表。わずか2週間の反攻で8集落をロシア軍から奪還したことになり、戦況が大きく動いていることは明らかだ。
「今回、ウクライナ軍により解放されたピャティハトキは、ロシア軍の補給拠点メリトポリへ向かうザポリージャ戦線の最重要ルートとなる入口。そのため、ここを奪還した意義は大きい。マリャル氏によれば、ウクライナ軍はマリウポリを目指す南ドネツク戦線でも『地上部隊が最大7キロ進軍し、ロシア軍に大きな損失を与えている』と述べていることから、ゼレンスキー氏の言葉通り、着実に一歩一歩前進している様子が伺えます」(全国紙記者)
17日には、ウクライナとの和平仲介に向け、ロシアを訪問したアフリカ7ヵ国の首脳ら代表団と会談を行ったプーチン大統領。だが、あくまでも「交渉を拒否しているのはウクライナだ」と主張する同氏が、停戦実現に懐疑的だったことは伝えられるとおりだ。
ウクライナ軍は現在、ザポリージャ戦線と南ドネツク戦線、バフムト戦線の3つの作戦正面から反転攻勢を仕掛けているが、専門家によればうち1点でも突破された場合、それはロシア軍の敗北を意味するという。
「つまりロシアは現状、和平交渉などできる状況にはないということ。そして仮に、南部の要衝であるベルジャンシクやメリトポリを奪還された場合、ロシア軍にとって途轍もない痛手。通常戦で劣勢になった時に考えられる選択肢は2つあり、1つはベラルーシに配備される戦術核使用に踏み切るのか、もう1つはロシアが折れる形で何らかの交渉を考えるか、です。ですが、ゼレンスキー大統領はウクライナ全土からロシア軍が撤退するまで和平に応じるつもりはないという姿勢ですから、現状は和平交渉の可能性は低い」(同)
ただ、ひとたびロシアが戦術核の使用に踏み切れば、世界は大変なことになる。通常兵器による戦争ということで支援のみにとどまっていた欧米諸国も、核が使われれば出てこざるを得なり、世界大戦的な戦闘に発展することも考えられるからだ。
「NATO高官がロシアとの直接的な衝突が『いつなんどき起きるかわからない』と警告し、NATOに厳戒態勢準備を急ぐよう促した、と報じるメディアもありました。昨年は、NATOストルテンベルグ事務総長が『NATOは即応部隊を30万人に増強する』と発表、東欧諸国の軍事力を後押ししてロシアの脅威に対応することを宣言しています。もしいま、ロシアが戦術核の使用に踏み切れば一気に戦争の次元が変わり、欧州諸国を巻き込んだ世界戦争に発展する可能性が高いのです」(同)
いずれにせよ、ウクライナ側の反転攻勢で南部奪還できるかどうかが、今後を占う大きなカギになることは間違いないようだ。
(灯倫太郎)