秋田県が高校2年生に配布する「妊娠前の男女が読む冊子」が「人権侵害」と批判される理由

 男女が将来の妊娠を前に、自身の生活や健康について考える「プレコンセプションケア」は、2012年に世界保健機構(WHO)が推奨した概念だ。

 出生率の低下が叫ばれて久しい日本においても重要な考えだが、そのプレコンセプションケアについて書かれた「将来、ママにパパになりたいあなたへ~妊娠・出産のリミット~」という冊子がある。同冊子は「日本家族計画協会」が作成したもので、これまでも、秋田県が公費で県下の高校2年生に配布したことで話題になった。

 ただ、冊子が作成された主旨がプレコンセプションケアについての啓蒙にあるものの、その中身の「独特な表現」に、抵抗を示す人が少なくないようだ。

 例えば、年をとることで男女ともに妊娠する能力が劣化することが強調されている。イラストで擬人化された卵子は、20歳のときには「バリバリのキャリアウーマンよ」と話しているのに対し、35歳になると「えっ手遅れ!?」。35歳を過ぎると顔に少し「シワ」ができ、「まだいけるかしら」とその口調に変化が。さらに、50歳の時点では、建物の入口に「閉店」の張り紙があり、その顔を見ることすらできなくなっている。

「紹介文にもあるように、冊子は『妊娠には年齢的な限界があるにもかかわらず、年を重ねてからでも容易に妊娠・出産ができると思い込んでいる人が少なくない』ことに警鐘を鳴らしています。ただ、不妊治療をしている人や、高齢出産を考えている人を追い詰めることになってはいないか、という意見もあるのです。また、産まない自由や性的マイノリティに関する視点も必要でしょう。SNSでは《もはや人権侵害》《閉店てひどい》という声が相次いでおり、取り組みの難しさを感じさせます」(社会部記者)

 昨年6月時点の秋田県の「出生率」は4.0で、前年を0.3ポイント下回り、1995年以降、29年連続で全国最低を記録し続けている。出生率の問題は喫緊の課題だが、果たして、この冊子を読んだ県下の高校生はどんな感想を持ったのか…。

(ケン高田)

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