新型コロナの起源はタヌキだった? 再浮上した「動物市場犯人説」の信憑性

 世界を揺るがす新発見となるのか、はたまた根拠の薄い説で終わるのか…。その行方に世界の科学者たちから熱い視線が注がれている。

 国際的な研究者チームが新型コロナウイルスについて、感染拡大の起源が中国武漢の市場で取引されていたタヌキとの関連を示す新たな遺伝子データを確認した、と16日付の米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。

「記事によれば、研究チームが中国・武漢の華南水産市場内の動物の檻や車、地面などから採取した遺伝子データを再分析したところ、荷台から採取した標本に新型コロナウイルスとタヌキの核酸がそろって検出されたというのです。同市場では、魚介類をはじめコウモリやヘビ、ウサギのほかタヌキなどの野生動物を食用として販売しており、当初は宿主動物のコウモリやセンザンコウからの感染を疑われましたが、今回採取された標本分析により、タヌキが中間宿主の役割を担って感染が拡大した可能性が出てきたということです」(中国ウォッチャー)

 新型コロナウイルスが初めて武漢市で発見されたのは、4年前の2019年12月。当初、野生生物市場で売買される動物が起源とされたものの、中国の研究チームが採取した検体を解析した結果、ウイルスの痕跡は市場で販売されていた動物自体ではなく、売買人や買い物客に由来すると結論付けられ、中国政府もそのように発表していた。

 ところがその後、米政府機関であるエネルギー省と連邦捜査局(FBI)などが、武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高い、との分析結果を発表。「研究所流出説」への関心ががぜん高まっていた。

「むろん中国政府はこれに猛反発し、米国がパンデミックを政治に利用していると痛烈に非難したことは記憶に新しい。しかし、今回の再分析の行方いかんでは、人間発だと結論付けた中国側の主張を真っ向から覆すことになりますからね。再び市場から広まった可能性に注目が集まることは避けられないでしょう」(同)

 報道を受けWHOは、中国が新型コロナウイルスとタヌキなど野生動物間の関連性について、公表しなかったことを批判。中国政府と蜜月関係にあるテドロス事務局長でさえ、今回ばかりは「本来であれば、このデータは3年前に共有されなければならなかった。中国はすべてのデータを公開すると同時に必要な調査を遂行し、その結果を共有することを促す」と遺憾の意を示している。

「とはいえ、感染拡大はあくまでも『人から人』、さらには国外で発生し、冷凍食品を通じて国内に侵入した可能性が高いと主張してきた中国政府としては、野生生物市場での違法取引が起源となれば、メンツ丸つぶれの由々しき問題ですからね。当然、今回の遺伝学的証拠も素直に受け入れるはずもないでしょう。結局は平行線が続き、うやむやになる可能性もありますが、中国にはまだ多くの野生生物市場があり、他のウイルスが広がる恐れある。つまり、今回の遺伝子再分析結果が事実であれば、データ第2第3の新型コロナウイルスの起源になりかねないということです」(同)

 さて、今回のDNA解析によるタヌキ起源説。はたして中国政府の反応は?

(灯倫太郎)

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