現在、世界各地で感染が確認されている「サル痘」。アメリカ疾病対策センター(CDC)のまとめによると、28日時点で49の国と地域で4769人の感染者が確認されている。
ここ最近はほぼ毎日ニュースで取り上げられているが、新型コロナの流行に比べれば、拡大も遅いし、感染者数の伸びも少ない。そのため、世間では「そんなに大騒ぎすることなの?」と疑問の声も挙がっているようだ。
「コロナという人類史に残る感染症と比較すれば、そう思うのも無理はありません。感覚が麻痺してしまったというのが正しいのかもしれません」(医療ジャーナリスト)
ちなみに、02〜03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)が広がったのは30カ国。サル痘はすでにこれを上回っているが、SARSの罹患者数は8422人で、サル痘はこの半分。また、00年代半ばに広がった鳥インフルエンザ(H5N1)は、当時大々的に報じられたものの19年までの16年間で罹った人はわずか860人だ。
「新型コロナでさえ第1波のころは感染者が今ほど多くなかったが、それでも基準を上回り、WHOは最高度の警告である『緊急事態宣言』を出しました。今回のサル痘に関しては、国際的に懸念される緊急事態には当たらないとして宣言は見送られましたが、そこまでいかなくともWHOの警告には重みがあるということです」(同)
同機関には感染症の格付けに相当する“危険性評価”があり、その時の状況を踏まえて随時発表されている。それによるとサル痘は欧州だと上から2番目に高い「高い」。それ以外の地域はその下の「並」となっている。
「サル痘の致死率はウイルスの種類で異なりますが1〜10%と言われていました。しかし、現在流行するウイルスで死亡が確認されたのは今のところ1名だけ。致死率53%のH5N1や14〜15%のSARSには遠く及ばず、1%程度の新型コロナよりも少ない。WHOが緊急事態宣言を見送ったとおり、そこまで恐れる必要はないと思いますが、バイデン政権は全米の医療機関に30万回分のワクチンを配布することを発表しています。いくら致死率が低くともコロナのように変異を起こすのがウイルスの怖いところ。重症化しやすい変異種が出ないとも限らないので油断は禁物です」(同)
注意喚起の点から考えれば、多少大袈裟な報道にも意味があるということか。
※画像は国立感染症研究所ホームページより
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox