千載一遇のベッドインの際に、中折ればかり。普通に生活しているだけなのに、なぜか大量の汗が出る。そんな症状にお悩みなら、男性の更年期障害の疑いアリ! 加齢に抗えずとも”枯れススキ”になることだけは避けられないものか…。
「生理による定期的な体調の変化と隣り合わせの女性と違い、男性の場合はあまり認知されていない疾患なのかもしれません」
とは一般社団法人「日本オムテック協会」の倉持俊介代表理事だ。
テレビCMなどで周知されている「更年期障害」は女性特有の症状ではない。閉経前後に女性ホルモンの分泌が急速に減少してしまう女性と同じように、男性も20代前半をピークとする男性ホルモンの分泌が加齢に伴って減少。ホルモンバランスが崩れることで心身にさまざまな不調が現れてしまうのは、男女共通の悩みだという。
「よくある症状が、すぐにイライラしてしまうこと。男性ホルモンや女性ホルモンの減少によって『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンの分泌量が減少してしまうのが原因です。また、ホルモンバランスと合わせて自律神経のバランスも損なわれてしまいます。手足の冷え、動悸、不眠症の症状にも悩まされてしまうでしょう。いずれのホルモンも血管を縮めたり広げたりする作用にも影響しており、その機能が変調をきたして『ホットフラッシュ』と呼ばれる急に顔や体が熱くなって汗が止まらなくなる症状も現れやすくなります」
夜中に目が覚めて寝汗でビッショリは、更年期障害の可能性が高いのだ。一方で、男性特有の症状が性欲の減退や勃起不全(ED)である。
「男性ホルモンには、血管の健康を保つ役割もあります。不足することで血流が悪化。陰茎への血流が悪くなることでEDや頻尿の症状が現れやすくなります。ちなみにEDは、性交機会の75%以上で挿入などを断念する状態をいいます。さらに、男性ホルモンの減少に伴って、勃起や射精を促す脳内物質『ドーパミン』も減少。特に40代以降は男性ホルモンの減少が顕著なだけに、中折れしてしまうケースも増えてしまうと思われます」
この“快楽ホルモン”が不足すると性生活以外にも影響を及ぼすようで、
「仕事への集中力が続かなくなります。日々のルーティンが雑になるのはもちろん、新しいことへのチャレンジ精神も失ってしまいます。職場内での協調性も損なわれて、チーム内で業務連絡をすることでさえも億劫に感じてしまうケースも少なくありません。みずからの全盛期と比較してネガティブな思考にとらわれて精神的に苦しくなり、最悪、自死してしまう人も‥‥」
ホルモンバランスの変化を侮ってはならないのだ。
精神面だけではない。見た目にも悪影響が出る。
「男性ホルモンには、食事で得たエネルギーを筋肉に変える作用があります。基礎代謝を増やし、内臓脂肪の減少、ないしは太りにくい体にしてくれます。ところが男性ホルモンが減少してしまうと、タンパク質や糖が脂肪に変わりやすくなり、内臓脂肪が増加してしまいます。だから、どうしても中高年はお腹の出っ張っただらしないボディになりがちなんです」
そのまま動脈硬化や糖尿病などの循環器系の疾患を併発させてしまう「負のスパイラル」へ直行。免疫力まで弱めてしまい“虚弱体質”になりかねないのだ。
「私たちが運営している整体院にも『よく風邪をひいてしまう』と話す方が珍しくありません。疲れやすく、疲労感が抜けにくい体質に悩まれる方も珍しくありません」
更年期障害に抗うには、十分な休養、栄養バランスの整った食事、適度な運動の「健康三原則」が必須だ。しかしながら、多忙でストレスフルな中高年男性世代がすべてをクリアするのは容易ではない。そこで提唱したいのが「男性ホルモン上昇運動」だという。
「まずは骨盤周りのストレッチが肝要になります。というのも、陰茎に近いだけに股関節が硬い人はEDになりやすいと言われています。もっとも、男性は女性に比べると体の構造的に股関節が硬くなりがちです。お風呂上がりに無理のない範囲で、開脚ストレッチや仰向けになってヒザを抱えるストレッチをして、股関節を伸ばせば血流が増え、EDもとい更年期障害の予防や改善につながります」
鍛えるべきは筋肉量の多い太ももと「第二の心臓」とも称されるふくらはぎで、
「すぐにでも実行できるのはスクワット。運動不足の自覚がある方は、10回程度を3セットやるのが理想ですが、慣れてきたら回数を増やして、太ももの筋肉量をどんどん増やしましょう。ふくらはぎはヨガの『橋のポーズ』と呼ばれる、仰向けに寝そべり、両足を地べたに付けて両ひざを立てた状態でお尻を持ち上げる動きが効果的です。ふくらはぎだけでなく、大臀筋や内転筋も鍛えられます」
そして摂取する食事にも気を遣えれば、さらなる効果が。
「バナナに含まれる『トリプトファン』というアミノ酸は『セロトニン』の材料になるので、不眠解消に期待できます。また、牛肉や羊肉に多く含まれる『アルギニン』というアミノ酸はED 改善に役立ち、牡蠣や豚レバーなどに多く含まれる『亜鉛』にも男性ホルモンを促す効果があります。サプリメントを活用するのも1つの手です」
1日の数分でも、男性ホルモンを意識した習慣を心がけたい。
【「男性の更年期障害」チェックシート(10)】
セルフチェックで6点以上なら近くの医療機関へGO!
(1)すぐにイライラしてしまう 1点
(2)手足が冷えやすい 1点
(3)少し動いただけで動悸や息切れを起こしてしまう 1点
(4)夜眠れない日がある 1点
(5)近頃、仕事が億劫だ 1点
(6)お腹が出てきた 1点
(7)休日に休んでも疲労感が抜けない 1点
(8)急に顔や体が火照って汗が止まらなくなる 2点
(9)性欲がない 2点
(10)性交中に4回に1回は中折れしてしまう 2点