新年早々、〝恐怖の大統領〟の就任が世界中を震撼させている。その波紋は、極東アジアにも大きな影響を及ぼすことは必至だ。果たして少数与党に揺らぐ我が国の宰相はこの危機をどう乗り切るのか。ジャーナリスト・池上彰氏による新春特別講座2回目は25年の日本の行く末をスッキリ解説する!
──前回はトランプ再選と世界への影響について伺いました。今週は日本への影響について教えてください。
はい、そうでしたね。
──20日の就任前に石破さんはトランプ大統領と面会することができませんでした。2人はウマが合うのか気になります。
ハハハ、いきなり来ましたね。確かに、石破総理のまるで上から目線のようなしゃべり方で日米首脳会談をしたら、まとまるものもまとまらなくなるんじゃないか、と心配になりますよね。でも、外務省筋に聞くと、石破さんがどんな言い方をしても、外務省には優秀な通訳がいるからトランプ大統領を立てるよう英語に訳せるから大丈夫だって教えてくれました(笑)。それに、最初のトランプ政権時代に、安倍総理がゴルフ外交で仲よくなったのを覚えていませんか。実は、石破総理も高校時代はゴルフ部所属だったんですよ。
──ええっ! 話には聞きましたが、プレーする姿がどうにも想像できませんが‥‥。
もちろん本当にゴルフをやるかどうかはわかりませんが、前回話した通りトランプはすべてディール(取引)です。日本に高い関税をふっかけるのはアメリカにとって都合のいいことをしろということです。日本はアメリカへの投資を増やします、あるいはアメリカ軍の駐留費用をもっと負担します。だから無茶な要求を取り下げてください。こうした取引がどれだけできるか、最初の試練になるでしょう。
──石破総理は年始の会見で「令和の列島改造」をぶち上げました。これで地方が元気になるのでしょうか?
そうですね、地方にお金は配りますが、そのお金で、地方が何をするのかって話ですよね。石破さんの政治の父は「日本列島改造論」の田中角栄です。角栄は新潟県のような貧しい地方を何としても豊かにしようとした。石破さんも同じ日本海側の鳥取で育ってるわけですから、いかに地方が疲弊しているのかを身をもって体験してるわけです。ですから地方にもっとお金を配る角栄や竹下登のやり方を受け継ごうということです。
──ただ、石破総理は党内での基盤が盤石ではありません。石破降ろしが起きるのでは?
自民党にとって一番大事なことは、予算を成立させることなんです。予算が通って初めて公共事業が行われ、自民党の支持団体にお金が入るわけですからね。そのためには、「103万円の壁」の国民民主党だろうが「高校授業料無償化」の維新の会だろうが、とにかく寄せ集めて過半数の支持を得て予算を成立させたいわけです。ということで、とりあえず来年度予算を成立させる3月までは石破降ろしは起きません。
ただし、予算を成立させた後が問題です。7月20日といわれる参議院選挙に向けて選挙の顔として石破では勝てないということになれば、4月以降に石破下ろしが起きてくることになるかもしれません。
(つづく)
池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野生まれ。73年NHK入局。94年より「週刊こどもニュース」を担当。05年に退局後は、フリージャーナリストとしてテレビ出演・執筆活動を続けるほか、名城大教授など複数大学で学生を指導。