現地時間の1月20日、米ワシントンの連邦議会議事堂内にある「ロタンダ」で、第47代アメリカ大統領として宣誓を行ったトランプ氏。ところが宣誓の際、失念したのか、あるいは意図的だったのかは不明だが、聖書の上に手を置かず、横に立つメラニア夫人も、かすかに困惑した表情を浮かべていたことで、その真意を巡りSNS上では様々な憶測が広がっている。
トランプ氏はこの日の就任演説で、「アメリカの黄金時代が今、始まる。トランプ政権の1日1日、私は極めてシンプルにアメリカファーストを貫く!」と宣言。バイデン前大統領の政権にも言及し「簡単な危機管理さえできない政府が、同時に海外で破滅的な出来事の連続につまずいた」と批判するとともに、選挙キャンペーン中に起きた暗殺未遂事件にも触れ、「『米国を再び偉大に』するために神に救われた」と主張。自らの復帰を「神の意思」だと強調してみせ、今後大きく変わっていくであろう政策転換の正当性をアピールした。
その後、トランプ氏はホワイトハウスに戻り、聖書を前に「合衆国憲法を維持、保護、擁護する」と誓ったのだが、通常、その際は聖書に手を乗せるのが慣例。しかしトランプ氏はなぜかそうしないまま、続いてJ・D・ヴァンス副大統領候補が宣誓を行い宣誓式が終了した。国際部記者の話。
「キリスト教徒が多数派を占める米国の大統領就任式では聖書が用いられ、新大統領が左手を聖書に置き、右手を掲げて『神に誓って(So help me God)』と宣誓するのが慣例となっています。これは初代大統領のジョージ・ワシントン以来続いていることですが、ただ、聖書を用いるかどうかに法的な規定はありません。なので、1901年に大統領に就任したルーズベルト氏は実際、聖書なしで宣誓しています。しかしトランプ氏は2017年の宣誓時、リンカーン大統領が19世紀に使った聖書、おそらくはレプリカでしょうが、これを用いて慣例通り手を置いて宣誓していますからね。今回はただ単に手を置き忘れたのか、何らかの意図があったのか…。結果、同日午後のグーグル検索ランキングでも『聖書』の話題がトップになるなど、ネット上がザワついたというわけなんです」(同)
広報担当者はその理由についてコメントしていないが、今回トランプ氏が用意した聖書は2冊。1冊は前回使用したリンカーン大統領が宣誓した聖書(レプリカ)。もう1冊は母親がトランプ氏に贈った聖書だという。
「母親からトランプ氏に贈られた聖書は『カルヴァン派の長老派』のものですが、トランプ氏の母親はスコットランド系の長老派で、カルヴァン派というのはフランスに生まれたカルヴァンが源流。それが、16~17世紀頃にスコットランドに伝播し、スコットランド系アメリカ移民の人々の間で広まったのがカルヴァン派の長老派といわれるものです。トランプ氏は前回、リンカーン大統領が宣誓した聖書(レプリカ)の上に、母親のカルヴァン派の長老派の聖書を置き、そこに手を置いて宣誓式を行いました。したがって、福音派、つまり南部のバイブルベルトにいる原理主義を持つ人たちからは、トランプ氏はカルヴァン派の長老派であるとみられているはず。ただ、母親がそうだとしても、トランプ氏自身が敬虔な信者ではあるかどうかは、はっきりしていないようです」(同)
聖書に手を置かなかったことが、検索ランキング1位になるなど世界の視線を集めるトランプ氏だが、今後もその一挙手一投足に注目が集まることは間違いない。
(灯倫太郎)