ロッキード裁判丸紅ルート公判で「ハチの一刺し」という流行語を残した榎本三恵子も深い爪跡を残した1人だ。田中角栄秘書の元妻ながら、検察側の証人に立った榎本は171センチの長身と、その美貌を生かしタレントに転身した。
「榎本は証言の後の記者会見で『ハチは一度人を刺したら死ぬと言われています。今のわたしはハチと同じ心境です』と発言したわけですが、その後雑誌で脱いだり、バラエティー番組に出演するなんて夢にも思わなかった。今でも鮮明に覚えているのが『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)での榎本。ハチの扮装をして出演した。当時のバラエティーはお笑いだけじゃなくて、風刺性があった」(社会部デスク)
ハチは一度刺しても死なず! 作家の亀和田氏は榎本がグラビアを飾った月刊誌「ペントハウス」(講談社)の着眼点に感服する。
「マダムシリーズはまさに衝撃でした。加納典明撮影による榎本三恵子に始まり、82年、三越の岡田社長の愛人で特別背任と所得税法違反で逮捕された女帝・竹久みちの艶ショットを載せたり、さらには華道の家元・池坊専永の夫人で元衆議院議員の池坊保子がシースルー肌着で悩ましいポーズを取るわけです。単にアイドルや女優が売れなくなったから脱いだとか、際どいグラビアに挑戦というレベルじゃない。当時の編集長がそういうワケありマダムが好きだったというのもあり、今までにないジャンルを開拓した」
榎本が先鞭をつけた路線は、90年代になると、辺見マリ、山本リンダ、林葉直子らのヘア写真集として開花する。
「榎本にしても花柳にしても数多くの修羅場を潜り抜けてきた人ですから、脱ぐことぐらい屁とも思ってなかったはず。それに当時は雑誌媒体が今と比べ物にならないくらいたくさんあって、それに付随してグラビアの需要も強く『榎本三恵子が脱いだ!』という見出しだけでバカ売れしたんです」(亀和田氏)
「笑っていいとも!」(フジ系)、「三枝の愛ラブ!爆笑クリニック」(関西テレビ)、「徹子の部屋」(テレ朝系)、榎本は売れっ子タレントがたどる定番コースに次々とゲスト出演を果たした。
一時の熱気が冷えると、85年、今度は「平凡パンチ」で再び肢体を披露する。その後は銀座のクラブの雇われママや会社員など職を転々とした。
「92年頃、榎本が代官山で『有栖川』という、こじゃれたそば屋をオープンした時に行ったことがあります。そば屋カフェの先駆けみたいなお店でね。小さな店なんですけど、テキパキと動くおかみさんがいて、それが榎本さんでしたね。色のある人でしたね」(亀和田氏)
99年、元夫・榎本敏夫との間に生まれた長男の榎本一が東京・北区議会議員に当選。元夫と息子とは「ハチの一刺し」以来、絶縁状態だったが、出馬を機に長男と和解している。
「21年11月、榎本一は覚醒剤取締法違反で逮捕。それに伴い議員も辞職しています」(社会部デスク)
親子共々、〝針を刺す〟とは、まさに親に似ぬ子はない、ということか。
*週刊アサヒ芸能12月5・12日号掲載