岸田文雄は足元にも及ばない歴代総理との「致命的な差」(3)「そろそろ進次郎では」と水を向けると…

 離党前の世耕弘成前参院幹事長(61)に、「国民が期待するリーダーの姿を示せていない」と苦言を呈された岸田総理。対して、強烈な個性で先陣を切ったのは、72年に就任した田中角栄氏だ。

 豊富な知識と行動力で「コンピューター付きブルドーザー」の異名で呼ばれたが、その中でも優れた点について、小林氏は人心掌握術を挙げる。

「角栄氏の秘書から聞いた話で、選挙中の候補者に選挙資金を渡す際の心得として、『このお金は相手に頭を下げて、もらっていただく気持ちで渡せ。間違っても、くれてやるという態度を見せるな』と、若手の秘書に厳しく指導していたんです。もちろん、支援した事実は口外せず、候補者の台所事情が選挙区に漏れて面目を潰さないよう配慮していました」

 田中派以外の議員を救うこともあれば、支援を求められれば、野党議員でも迷わずに手を貸した。

「『彼らは彼らで日本をよくしたいと思って戦っている』と言って気にせず、『利』よりも『情』を優先していました」(小林氏)

 野党にも骨抜きの人心掌握術を発揮、スキャンダルがなければ長期政権もおかしくなかっただろう。

 カリスマ性なら、先に登場した小泉氏も強烈な光を放った。宿願の郵政民営化に反対した議員に選挙で刺客を送る冷酷さを見せれば、国民には「小泉節」で人気を博し、歴代内閣史上最高の87%の支持率を記録。取材の機会が多かった、山村氏もこう証言する。

「『自分はどうなってもいい。日本がよくなるなら身を捨てる覚悟でやる』と、よく話していました。〝切った張った〟が大好きで、政権の延命は考えていなかったですね。岸田総理は捨て身を真似するだけで保身に走ってしまう。党内では、『小泉さんは自民党をぶっ壊すと言ったけど、本当の意味で壊したのは岸田総理だった』と嘆いていますよ」

 昨年秋に発覚した政治資金パーティーをめぐる問題で、岸田総理は麻生太郎副総裁(83)らに相談することなく、「岸田派」の解散を表明。それに各派閥も続くと、自身は責任を取らずに関係議員39人を処分し、空中分解をもたらした。

 その最中、鋭い嗅覚で政局に反応し、周囲を驚かせたのは先の小泉元総理だ。

「昨年12月末に山崎拓元副総裁(87)ら重鎮と会食した時、山崎氏が『そろそろ〝ポスト岸田〟に(息子の)進次郎の出番じゃないですか?』と水を向けると、小泉氏は『本人にも伝えたけど、このタイミングじゃない。50歳まで動くな』と、早い段階でアドバイスを送っていました。年明けに政治と金の問題がドロ沼化しただけに、小泉進次郎元環境相(43)が担がれて、本人も前のめりになっていたら、大やけどしていたと見られています」(政治部デスク)

 数々の修羅場を乗り越えた危機察知能力は錆びていなかったようだ。

(つづく)

ライフ