「トイレ内健康診断」チェックシート(3)中高年を襲う「便意喪失」とは

 排便の際に腹部に痛みを覚えたら、内臓にトラブルを抱えていることがあるので要注意だ。

「今、最も多い病気が、全国で24万人強が罹患しているという潰瘍性大腸炎です。これはストレスや腸内細菌の異常からも引き起こされますが、原因ははっきりわかっていません。もしトマトケチャップのような粘液状の便が1日数回、腹痛を伴って出る場合は内視鏡検査を受けてください」

 血便が出たり、排便後にお尻を拭くと血がついていたりする場合も言わずもがなで、検査が必要となる。

「便中に血を確認できるというのは、大腸ポリープや大腸ガン、クローン病などの疑いがあります。たとえ痛みがなくても、進行しているケースがある。現在、大腸ガンは男性の死亡数の3位に挙げられるほど増えています。痔かもしれないなどと放っておくのは危険なので、すぐに医師の診断をあおぎましょう」

 そして、これまた恐ろしいのは、排便において急激な変化が1カ月以上続く場合。なんらかの病気の可能性があるからだ。

 中でも中高年に多く起きるのが、排便障害。便意が消えてしまう「便意喪失」という状態に陥り、直腸の反射が悪くなってスムーズに排便ができなくなるという症状などがそれにあたる。

「排便にはタイミングがあります。それを我慢したりして逃すと、便意を脳に伝える機能が低下し、トイレに行きたいという感覚が抜けてしまう。さらに、中高年になると下剤に頼って排便する人が多いので、腸が便を押し出す力も弱くなってしまうのです」

 排便障害のもうひとつの大きな原因が便秘。慢性の便秘が続く場合は、内臓疾患以外にホルモンの異常や神経性の病気の疑いも出るなど、さまざまな問題をはらむ。

 便秘には複数の種類があるが、多いのは日常の生活習慣に起因する「常習性便秘」。これは食生活や運動量などからできる生活のリズムが影響し、排便活動が滞る症状だ。松生医師は毎日、無理なく行える食生活で快便を促す「腸活」を推奨している。

「まず、最も便意が強くなる朝にきちんと便を出すことから始めましょう。そのためには、朝御飯をしっかり食べることです。いい便を作るためには、食物繊維の摂取量を減らさないことも大事です」

 便秘解消に役立つ食材は数あるが、大きな効果があって手軽に摂取できるメニューとして松生医師が挙げるのが、納豆にスプーン1杯のオリーブオイルを加えた「オリーブ納豆」である。

「オリーブオイルは腸の滑りをよくします。納豆には食物繊維が多い。納豆菌の中に含まれるアンチエイジング成分のポリアミンが、腸の働きをよくします。オリーブオイルを入れると納豆の臭みが消えてまろやかになり、納豆が苦手な人でも無理なく食べられるので、ぜひ朝の一品に加えてみてください」

 さぁ、今日からトイレの中で自分の排尿、排便をチェック。自分の目で健康状態を知り、大病の予防に役立てよう。

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