昔はあちこちで当たり前のように見かけた平屋の一軒家。「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」といった国民的アニメでも主人公一家が暮らすのは平屋だったが、高度成長期以降は2階建てが主流に。ところが、近年は平屋の新築住宅が再び増えている。
国土交通省「建築着工統計調査」によると、23年に着工された平屋住宅は5万8154棟。これは3万2827棟だった14年から77.2%も増えており、居住用住宅に占める平屋の割合もこの10年で7.5%(14年)から15%(23年)も倍増している。
「理由は複数ありますが、まず2階建てより平屋のほうが建築コストを抑えられる。同様に足場を組む必要がないので増改築や修繕、外壁塗装の費用も安くできますね。また、建物の構造自体はシンプルなため、細かい注文に対応しやすく自由度の高いデザイン、間取りが可能などの利点もあります」(不動産業界誌編集者)
建物もそこまで広くないし、機能的で室内の動線も短い。そのため、家族同士のコミュニケーションも取りやすく、子育て世代の中にはあえて平屋を選ぶケースも少なくない。
「戸建てなのにマンションみたいな感覚で住むことができます。掃除の手間も2階建てに比べたら楽ですし、階段を上り下りする必要もありません。だから、平屋はシニア世代からも支持されています」(同)
ただし、当然ながらデメリットも存在する。
「ベランダがないので洗濯物は屋外で干さなければならず、庭はある程度のスペースを確保しておく必要がある。それと注意すべきは洪水などの水害リスク。ハザードマップなどを確認し、危険度の高い川沿いや低地は避けておくのが無難です」(同)
老後、昔買ったマイホームは夫婦2人で住むには広すぎ、どうしても手に余ってしまう。コンパクトな家に引っ越したいが、マンションよりは一軒家という人に最適。終の棲家として検討する価値はありそうだ。
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