“花粉症薬の保険適用外”は破綻の序章?「2022年危機」で揺らぐ健康保険制度

「花粉症薬は保険適用外に……」

 8月23日に全国の健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)が、2020年度に行われる診療報酬の改定に向けてこんな「提言」を行ったものだから、東京都民の場合だと2人に1人は花粉症という“国民病”なだけに大きなニュースとなった。

 健保連がこんな提言を行ったのは、医療機関で処方される花粉症薬と同等の成分の薬は薬局でも売られている。つまりは市販薬で代替可能なので、今後も増え続ける医療費と健康保険の財政圧迫を考えた場合、花粉症に関しては自己負担にすべきという理屈だ。それにより年間で最大600億円の医療費削減効果が見込めるという。

「花粉症薬ばかりの報道が先行してしまったので意外に知られていませんが、実は健保連は①湿布、②ビタミン剤、③保湿剤(アトピー関係は除く)も保険適用外にすべきだと提言しています。理由は花粉症薬の場合と同じ。健保連ではすでに、湿布・ビタミン剤については2015年から、保湿剤は2017年からずっと主張し続けていて、2018年には患者の重症度や医薬品の有効性の観点から、保険適用の割合に差をつけるべきとも提案しています」(全国紙記者)

 そして、 もう一つ花粉症薬の保険適用外報道が先行したために見落とされているのが、すぐ後の9月9日に健保連が行った「提案」だという。

「というのも、先の『提言』を行った大きな背景として、医療保険制度全体の財政悪化が急速に進む『2022年危機』があることが指摘されているからです」(同前)

 2022年は団塊の世代が75歳に到達し始める。つまり既にして成立している高齢化社会が「超」高齢化社会に突入する境目に当たる。とすれば当然、現役世代が高齢者医療のために拠出する金額も増大する。そして、2019年まではほぼ29%の介護・年金も合わせた保険料率が、22年には30%の大台を超え、25年には一気に31%まで高まるという。これが「2022年問題」、つまりは、「保険料率30%時代」で、その到来は目前に迫っている。だからこそ、今の時点で保険料率の高騰に歯止めをきかせないといけない。そのための、花粉症薬の保険適用外化というわけだ(もちろんそれ以外の見直しも含めて)。

 最初の「提言」を受けて、ドラッグストア関係者からは歓迎の声が聞こえ、日本医師会は「医療費削減ありき」と批判するなど、関係各所からは異なった声が聞こえる。もちろん花粉症に悩む人にとっては新たな家計負担になるから、賛成する声が多いはずはないだろう。

 いずれにせよ2020年度の診療報酬の改定時には国民的議論が必要なのは言うまでもない。

(猫間滋)

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