日本各地で花粉症が猛威を振るっている。
一般的に花粉症のシーズンは2~4月と言われるが、原因となる花粉は、春に飛散ピークを迎えるスギやヒノキだけではない。地域によっては、秋にもヨモギやブタクサなどの花粉が飛散することもあり、人によっては年に4、5カ月間も花粉症に悩まされることになる。
花粉症による症状の代表が、原因物質であるアレルゲンによって引き起こされるくしゃみや鼻水、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎や目の痒み。他にも風邪のようなだるさや集中力の欠如など多岐にわたる。
だが、近年はこれらの症状に加えて「花粉症が原因の歯痛」と判断される患者が急増しているという。都内在住で花粉症歴20年のAさん(45)は、今年も1月下旬から目の痒みが出始めた。ところが、3月に入ると突然、左の奥歯付近が痛み出したというのだ。Aさんが言う。
「最初は目の下の奥のほうに痛みを感じていたんですが、その痛みが徐々に奥歯に移ってきたんです。特に階段を降りる時や、挨拶する際に頭を下げると、ひびくような、うずくような痛みを感じるようになり、歯科医を受診すると『花粉症による歯痛』と診断されたんです」
歯痛の原因は、花粉症によって鼻の中が炎症を起こす「副鼻腔炎」になり、神経が圧迫されたことによるという。
「20年以上も花粉症に苦しめられてきましたが、歯が痛くなったのは初めての経験でした。鼻水や目の痒みだけでも死ぬほど苦しいのに、これに歯の痛みが加わるなんて、もう地獄ですよ」
多くの花粉症患者の鼻の中はAさんのように炎症を起こしていると言っていいだろう。つまり、いつ歯痛が起きてもおかしくないのだ。医療ジャーナリストが説明する。
「副鼻腔というのは頬の裏側にかけて広がっている鼻のまわりにある空洞のこと。この鼻腔に細菌が感染して炎症が起きている状態が、副鼻腔炎です。花粉症を発症すると鼻の中が腫れて粘膜がたまりますが、その粘膜が鼻の空洞部分をふさいでしまいます。副鼻腔は上の奥歯の近くに位置しているため、細菌による炎症で歯の根に圧がかかり、歯痛をもたらすのです。歯が押し出されているような状態なので、噛んだ時に痛むのではなく、平常時でもなんとなく浮いた感覚を覚えたり、ズキズキと痛むことがある。これが副鼻腔炎による歯痛の特徴だとされています」
花粉症による副鼻腔炎かを判断するには、レントゲンやCT撮影をする必要がある。
「歯の痛みを感じたらまずは歯科医を受診し、虫歯や歯周病ではないと診断されたら、副鼻腔炎を疑い、次は耳鼻科を受診、ということになります。副鼻腔炎であれば、抗生物質の服用で炎症が治まることが多いので、早めの受診をお勧めしますね」(前出・ジャーナリスト)
うんざりするような症状に加えて歯痛まで…。花粉症患者の受難はいつまで続くのか。
(灯倫太郎)