定年などで退職したサラリーマンが避けて通ることができないのが健康保険をどうするかという問題だ。元職場の社会保険に継続加入することもできるが、退職後2年間に限られている。他にも74歳まで加入可能な特例退職者被保険制度や、子供の扶養に入る、という選択肢もあるが、もっとも多いのは国民健康保険への移行だろう。
とはいえ、国保の保険料は、自治体によって大きく異なるのをご存じだろうか。
「国保の保険料は計算方法が複雑で、個人の所得ごとの『所得割』、資産に応じた『資産割』、1人当たりの『均等割』、1世帯当たりの『平等割』と呼ぶ算定方式があります。自治体によっては、この4種類すべてを使って計算する場合や、2つだけを元に算出するケースもあるんです。これが「保険料格差」を生じさせている大きな原因と言われています」(ファイナンシャルプランナー)
ちなみに各都道府県ホームページで公表されている国保の標準化保険料算定額を確認すると、今年度における保険料が全国で最も安かったのは、福島県檜枝岐村だった。国保料のうち、後期高齢者支援金分と介護保険料はほぼ標準額だったが、医療分に関しては県内のほとんどの自治体が均等割で2万円から3万円台前半の中、同村は2049円。約10分の1と突出して安かった。
檜枝岐村に次いで2番目に安かったのは、岩手県田野畑村の4555円。3番目は東京都利島村の5379円だった。
「他にも東京の島しょ部は、御蔵島村や小笠原村なども保険料が安いですね。国保料が高い自治体と比べると平均額で年間10万円前後も安いのですが、問題はこれらの地域には診療所くらいしか医療機関がないこと。定期的な通院を必要とする持病を持つ人の移住には不向きです」(前出・ファイナンシャルプランナー)
国は、こうした国保料の格差を是正しようとしており、すでに大阪や奈良では府や県全体で保険料水準を統一している。今後は他の各県でも順次導入される可能性が高いが、
「それでも県単位では国保料格差が発生すると予想されます」(前出・ファイナンシャルプランナー)
引っ越しや移住に際しては、環境や交通利便性など多くの条件があるだろうが、保険料の安さも選択基準の1つになるかもしれない。
*写真は福島県檜枝岐村