昨今では近視が治る手術としてすっかり定着したレーシック手術。中には「日帰りで簡単、格安」をうたったものもあるが、実はこの手術も本来、高度な技術と最先端機器が必要になる。
「レーシック手術で使用するエキシマレーザーは、フライングスポットという1ミリ弱の小さな点のレーザー照射を高速で行うもので、角膜を削って望みの屈折を作ります。いいレーザーの価格は7000万円ほどですが、2000万円ほどの旧式で安いレーザーを使う美容系眼科もどき医院も多い。大きなエネルギーを一気に角膜へ照射するため、網膜剥離や白内障を起こすこともある。さらに美容系外科医ですので、目の合併症が起きても治せません」
レーシック手術を希望する近視患者の網膜は、伸びて風船のように薄くなっている場合が多い。そこへちょっとした衝撃が加わることで、網膜に穴があくことがあるのだという。
「美容外科系の眼科もどきクリニックの中には『診察は無料』と宣伝し、施設に入るなり手術を前提に検査が進んで、手術の予約をするまで帰してくれないとか、友達紹介で4万円をキックバックするなどの医療法違反の手法さえとっているところもある。ですが、悪質な美容外科経営陣たちは取締りがないので平気で違法行為もするし、合併症が起きると眼科に行けと突き放す始末です」
また、花粉症患者が急増するこの時期、ホウ酸で目を洗う眼科医も見受けられるが、
「ある地方の眼科医院では、看護師が患者さんの目の下に膿盆をあてがい、ホウ酸で洗っていく、という行為が平然と行われていました。実は涙の中には乾燥を防ぐ脂とムチンなどの角膜を守ってくれる成分が含まれているので、それをホウ酸などで洗うと大事な角膜保護成分が流されてしまい、目の中に汚染液を行き渡らせてしまいます。当然、いくら洗っても病状は改善しないので、患者さんは毎日、その医院に通わなければならない」
打球を目に受け、網膜黄斑部の真ん中に丸い穴があいた高校の野球部員が町医者から紹介された大学病院を訪ねると、とりあえず点滴を打ちましょうと入院させられた。そして「そのうち自然に治るかもしれませんよ」と1カ月も放置されてから深作氏のもとを訪れた、というケースや、
「ある有名病院で30代の女性が左目網膜剥離の手術を受けたのですが、2回失敗され、痛くて我慢できないと訴えると、なんとその左目を摘出。当院に来た時には右目の網膜剥離は放置されたままだった、という悲劇的な事例もあります」
残念なことに、これらは氷山の一角。「こんなことを続けているかぎり、日本の眼科外科医学は永久に二等国家レベルで、患者は手術後失明の山となる」と深作院長は嘆くのだ。