【ロシア】旅客機のポンコツ化で事故が急増するウクライナ侵攻の“ツケ”

 7月12日、モスクワ郊外で修理直後のテスト飛行中だったロシア製旅客機「スホイ・スーパージェット100」が墜落。乗員3名全員が死亡する事故が発生している。

 ロシアでは昨年以降、フライト中の航空機の故障が急増。現地メディアによると、その数は23年だけで少なくとも74件にのぼり、これは前年のほぼ倍になるという。

 今回の墜落の事故原因については現在調査中だが、ロシアの国営通信・タス通信は、鳥がエンジンに吸い込まれた「バードストライク」の疑いを報道。それが事実なら不幸なアクシデントと言えるのだが、同国では機材の整備不良などが原因と思われるトラブルが多いのも事実だ。

 その背景として専門家の間で指摘されるのは、ウクライナ戦争による経済制裁。これはいったいどういうことなのか?

「軍用機を除く世界の航空機市場の2大シェアを誇るエアバス社はEU、ボーイング社は米国のメーカーです。それはロシアの航空会社が保有している機材も例外ではありません。しかし、22年の軍事侵攻後はメンテナンスや修理用のパーツ類の入手が困難になっています」(航空機事情に詳しい大手紙記者)

 今回墜落した旅客機を製造するスホイ社をはじめ、他にもツポレフ社などロシアには複数の航空機メーカーが存在するが、大手2社の機材を数多く保有。部品はメーカーや機材で異なるため、流用することもできない。

「ロシアは軍事侵攻時点で海外のリース会社から借りていた500機を超す機材を返却せず、そのまま接収しています。将来の部品不足を想定してパーツ取り用に機材を確保したと見られていますが、当然これで全部のパーツが入手できるわけではないんです」(同)

 さらに航空機のメンテナンスに関する情報はメーカー内で日々アップデートされ、自社機材を運用する世界中の航空各社で共有。ところが、ロシアの航空会社にはこれに関する情報も得られないという。

「深刻な事故の原因となりうる不備の情報もありますし、加えて整備担当の人員不足も大きな問題。軍に多くの整備スタッフを持っていかれてしまったからです」(同)

 本来、航空機は公共交通機関の中でも特に安全な乗り物だが、ロシアではその信頼性が揺らぎつつあるようだ。

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