現在のAIの進歩はすさまじく、2045年には人間の知性を上回るシンギュラリティを迎えるとの予言もあるが、いずれにせよAIの進歩は社会を大きく変えるであろうことは想像に難くない。ところが、総務省が7月5日にまとめた「情報通信白書」では、愕然とする数字が報告されている。AIを利用したことがある人が、中国人は56%、アメリカが46%であるのに対し、日本人はわずか9%に過ぎず、日本人の圧倒的な“AI音痴”ぶりが活き彫りになったのだ。
またこの数字から分かるように、AI開発を巡っては米中が最先端の領域でしのぎを削っているが、実際の最近の動きを見たところ、今後、中国がアメリカ以上の存在感を示すかもしれない。
「7月4日から上海で、大規模なAI展示会が開催されました。その中、センスタイムという会社はもともと顔認証技術の会社でたが、OpenAIのChatGPTの衝撃を受けてAI開発に乗り出した。そして今回同社が発表したAIは、OpenAIの最新AIのGPT-4oに数学的推論という分野でひけをとらない性能だということで、関係者の間で話題になっているというのです」(経済ジャーナリスト)
中国は米中の技術対立や国内の情報検閲の必要性から、バイドゥやウェイボーなど、IT技術を自家製で賄い、GAFAMなどに提供されてきた技術にだいぶ追いつきつつある。携帯電話でも、かなり前にアメリカが規制対象としたファーウェイが昨年9月にリリースした5Gスマホは7ナノメートルの高性能半導体搭載でバカ売れ。独自のOS搭載で、アップルやアンドロイドを脅かしつつある。
「またAI分野では、6月8日に可霊という会社が公開したAIで生成した動画は、そのクオリティの高さに加え、OpenAIのAIでは1分の長さまでしか作れないものを2分まで作れるということで、やはり関係者を驚かせました。世界知的所有権機関(WIPO)という特許の国際機関が示したレポートでは、2014~23年の10年間に世界で公開された特許のうち、7割の約3万8000件が中国から出願されたもので、2位のアメリカの約6300件を桁違いで圧倒しています」(同)
IT技術革新はアメリカから起こったので、中国は遅れてきた国だが、AI開発はわずかの遅れでほぼ同時代的なスタート。だから物量に勝る中国がリードしてもおかしくないのだ。
一方の日本。最新の半導体では、最終製品に仕上げる「後半工程」と呼ばれる分野では技術的に優れるとされる。そこで化学大手のレゾナックが、7月8日にこれらメーカー10社によるコンソーシアム(連合)を発表。GAFAMの企業とも連携するとした。
しかし…。世間全般はかなりのAI音痴というのだから、「デジタル敗戦国」ぶりは草の根から深刻なのである。
(猫間滋)