マクドナルドのAI広告炎上騒動が意味する「食傷」と「AIバブル崩壊秒読み」

 アメリカOpenAI社が2022年11月30日にChatGPTををリリースするや、特に経済界はAIが席巻。だいぶ世の中が様変わりした。

 一方で世の中は物価高で、何でも値上がりの時代。これに逆行するかのように、マクドナルドでは8月19~30日の期間限定でポテトの値下げを行っているのだが、同社の場合、AIの採用でとんでもない被害を被ることになった。同社が「マックフライポテトM・Lサイズ250円キャンペーン」をアピールするためにXに上げた広告は、AIで生成された美少女が次々と登場するというものなのだが、「不気味」、「買う気がしなくなった」などといった否定的な声がSNSで噴出してしまったのだ。

「PR動画は、実写と思わせるような精巧に作られた美少女が数秒おきに登場するといったもの。気持ち悪いと思うかどうかは個人差があると思いますが、ほとんど動きのない美少女が次々とポテトを手にして登場するという設定だけに、AIにしなければならない理由はなく、“AIの活用で最新を行ってます”感が出でしまったことは否めないでしょう」(ハイテクライター)

 おそらくは食に関するものだけに、人々のナイーブな感覚に抵触しまったとも思われるが、AIは非人間的なものを感じさせるあたりも実態としてある。ただ、あまりのAIの氾濫に世間は辟易としているのも事実だろう。

 実際、アメリカではワシントン州立大学の研究チームがAIを用いたCMの好感度調査を行ったところ、購買意欲を減退させるという結果が報告されているという。

「家電、サービス、医療などの分野で、同じものに『ハイテク』と『AI』と謳ったラベルをつけて消費者の反応を見たところ、AIの方では大幅に購買意欲が低下する結果が出たそうです。特に高額なテレビ、医療機器、金融サービスでそれが顕著に現れたということで、安全・安心とAIが相いれないものになっているということが分かります」(経済ジャーナリスト)

 これとは別に、過度のAIブームは金融リスクにつながっているという側面もある。

「アメリカのゴールドマン・サックス・グループの株式調査の責任者が、90年代後半にIT関連企業への過剰な投資によってもたらされたドットコムバブルや、最近の暗号資産ブームを引き合いに出し、現在のAIブームを背景にしたハイテク株はバブルの様相を呈しており、いずれ下落に転じるだろうとの分析を7月に行っています。実際、IT各社がAI競争に参戦したことで株式市場は半導体関連銘柄が引っ張り好調ですが、すでに投資家は各企業が投資に見合ったリターンを得ているかどうかを見定める段階に入ったとされる。そこでリターンが思ったほどではなかったとなると、一気にバブが弾けて全体も大暴落というシナリオは十分に考えられます」(同)

 現在好調な株価がいつ大暴落するやも分からないことは、8月5日にあった日経平均の4400円超えの急落で証明済み。マクドナルドの件しかり、何事も過ぎたるは及ばざるが如しということか。

(猫間滋)

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