すでに会場内の買い物、レストランでは現金払いに対応しない旨を告知している来年開催の大阪・関西万博。代わりに万博独自の「ミャクペ!」をはじめとする各種電子マネーやQRコード、クレジットカードと幅広く対応する予定だが、万博では初となる“現金不可”の試みについては批判の声も上がっている。
この思い切った方針の背景には、日本のキャッシュレス決済の普及率の低さがあると考えられる。経済産業省の発表によると、23年における我が国のキャッシュレス決済率は39.3%。18年(29.7%)から5年で10ポイント近く上昇しているとはいえ、世界の中ではまだまだ低い。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会が作成した「キャッシュレス・ロードマップ」を見ると、3年前の21年時点のデータながら韓国(95.3%)や中国(83.8%)、オーストラリア(72.8%)、英国(65.1%)、米国(53.2%)など多くの国が日本を上回る。主要国で日本より低いのは、唯一ドイツ(22.2%)のみとなっている。
「世界の中で日本はキャッシュレス化後進国と見られており、そうしたイメージを払拭したい政府の思惑もあるのでしょう。その意図は理解できますが、普段から現金払いのみという方も一定の割合で存在し、彼らのニーズを無視することになります」(経済誌記者)
特に困りそうなのはシニア層。電子マネーやQRコード決済についてまったく理解していない人も多く、下の世代のように現金以外の方法でスムーズに支払いができるかは疑問だ。
「ただ、今年4月にそれまで原則禁止としていた食品の持ち込みを一転して容認し、弁当を持参することもできます。また、飲食店でも高齢者の間にも普及している交通系ICカードでの支払いも可能なため、最悪Suicaなどに多めにチャージしておけばなんとかなるはずですが…」(同)
それにしても、万博にかこつけてのキャッシュレス化推進となると、何やら解せない。