東京都知事と大阪府知事“月とスッポン”「権力格差」全比較(2)国政への影響力

 さらに大阪府の場合、事情は複雑である。大阪府内には大阪市と堺市という政令指定都市を抱え、一般の市町村より大きな権限を持つ中核市も多く抱える。東京都が抱える中核市は八王子市1つなのに対して、大阪府は豊中市、吹田市など、7つもあるのだ。

 そこで「東京都と大阪府を比べるよりも、大阪市と比べた方が実態に即している」と指摘するのは、地方財政・自治に詳しい、森裕之立命館大学教授だ。

「東京都は23区の特別区の制度も関わってきます。市町村の税収で大きいのが、固定資産税と個人と法人に分かれる市民税ですが、東京都は固定資産税と法人の市民税を徴収し、23区に配分する仕組みになっているので、都と23区は上下の関係に置かれます。これは地方交付税の交付で国と地方が上下関係に置かれるのと同じ構図にあります。

 ところが大阪府は、域内に大阪市をはじめ大都市を抱えているので収入面で東京都とは比較にならない。また、政令指定都市は事業の9割で都道府県と同じ権限を持つと言われているので、歴史的にも大阪は府より市が上で、市が支えていると見られてきました」

 そこで思い起こされるのが、橋下徹氏(54)が府知事時代に打ち出した「大阪都構想」だ。その発端は、10年に府と市の水道事業の統合を巡って、当時の平松邦夫市長(75)と対立したこと。言うことを聞かない市長に橋下氏がシビレを切らし、大阪市を解体して「財源と権限をむしり取る」として、都構想をブチ上げたという経緯がある。

 橋下氏はその前の09年には、国の直轄事業の負担金で、文部科学省から数百億円の請求がきたことから「(国は)ぼったくりバーだ」と発言し、国と対峙した。大阪市との対立同様、大阪府の権限のなさに驚き、怒りを露わにしたということだろう。

 両者の力の違いを考える上では、国政との距離や関係も1つのポイントとなるだろう。もともと小池都知事は、女性初の総理大臣候補として名前が挙がったり、今回の選挙戦でも「裏金」自民党との距離を問われたりと、その動向からは永田町スズメも目を離すことができない。

 はたまた吉村知事は、全国政党の日本維新の会の共同代表を馬場伸幸代表(59)と務めるなど、国政への影響力も大きいはずなのだが─。評論家の伊藤惇夫氏はこう語る。

「橋下徹さん、松井一郎さん(60)時代の維新は、安倍晋三さん(享年67)、菅義偉さん(75)と、時の総理と距離が近いことで、国政レベルでの影響力がありましたが、今の馬場さんと吉村さんの共同代表体制になって、だいぶ希薄になりました。じゃあ、小池さんはどうかと言えば、国政の場に味方はいません。彼女の国政の場での支持・知名度があったのは、二階俊博元自民党幹事長(85)と太いパイプがあったから。でももう、その二階さんも実質、引退でしょう。

 しかもポスト岸田で動き始めた菅さんは、小池さんのことが大嫌いときている。小池さんと自民党との関係では、萩生田光一さん(60)がパイプになって動いていますが、その萩生田さんにしても、今年1月にあった萩生田さんの地元・八王子の市長選挙で小池さんの支援があったおかげで、裏金問題をよそに勝たせてもらった。そのことでもわかるように、自分の選挙区で勝ちたいからにすぎません」

 東京は4月28日の衆院補選15区で、小池都知事が支援した乙武洋匡氏(48)が大敗。1週間前の目黒区長選でも破れて、小池人気に“陰り”云々と言われている。それでも今回の都知事選では、下馬評で現職有利と見られており、地に落ちてはいないかのように見える。

 一方、維新の関西での選挙の強さは言うまでもない。となれば、草の根の選挙の強さと、それが国政まで与える影響力という点では、吉村知事に軍配が上がるのかもしれない。

(つづく)

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