東京都知事と大阪府知事“月とスッポン”「権力格差」全比較(3)「大阪都構想」に3度目挑戦

 では、現場レベルでの違いはどうだろうか。両知事の精力的な取材で知られるジャーナリストの横田一氏は、両者の決定的な違いを指摘する。

「22年4月より、都政記者クラブからフリーランスの記者が締め出されたままなのです。最初はコロナで会見場が密になるとのことでしたが、コロナ禍が明けてもいまだに立ち入りが許されていません。今回の都知事選挙でも、出馬表明を後出しジャンケンで遅らせたのも、早く表明してしまうと公開討論会などでカイロ大学卒業の学歴問題や、7つの公約の実現度、自民党との関係など、都合の悪い話が出そうな場を避けたいという意図が明らか。その点、吉村知事は質問のある記者には最後まで付き合い、会見が2、3時間に及ぶこともざらです」

 小池都知事のマスコミ対応は多分に官僚的で、そこは「小池都知事は上昇志向の塊で、都知事の椅子はそのステップアップの1つ」(横田氏)というキャラの違いもあるのだろうが、見方を変えれば、都の権威を笠に着られるからできることなのかもしれない。

 ところで、実力差はどうだろうか。伊藤氏はこう総評する。

「両者とも、かなり発信力が強く、特に小池さんのパフォーマンス力は高い。ですが実績が上がっていない。小池さんが公約で掲げた『7つのゼロ』でも、この8年間で達成できたのは、待機児童ほぼゼロとペットの殺処分ゼロの2つだけ。キャッチフレーズばかり躍らせるわりには、中身が乏しい。吉村さんの大阪は、一言で言えば経済が上向いていないところに万博頼み、という打つ手のなさ‥‥」

 両者とも、及第点には至らないようだ。

 特に6月5日に厚労省が公表した、23年の都道府県の合計特殊出生率で、東京は全国で唯一1を割り込む「0.99ショック」が衝撃を与えた。一方、小池都政は少子化問題で、0~18歳に「月5000円」の子育て支援をしたところだが─。

「子育て支援を始めたこと自体は評価に値します。ただ、前から言われている問題なのに、最近になっての開始とは、選挙対策と、国で岸田政権が後れを取っているのを見返してやろうという魂胆が明らかです」(横田氏)

 ここでもやはり小池氏の計算高さが際立っているようだ。

 一方で大阪に至っては、日本維新の会の馬場代表がネット番組で大阪都構想の再々チャレンジを言い出し、各所でひんしゅくを買っている。社会学者で、都構想について反対の立場を取り続けてきた薬師院仁志帝塚山学院大学教授は、あきれ果てながらこう言う。

「東京の特別区の制度を真似た大阪都構想では、よく大阪の東京に対する憧れやルサンチマンの現れだなどと言われますが、実はそんなものもない。最初に橋下さんが『大阪市の財源と権限をむしり取る』と言ったように、大阪市を解体して、大阪府の傘下に組み込みたいだけ。なぜ維新がそうも都構想にこだわるのか。それは府知事選挙では維新は圧勝ですが、大阪市は相対的に弱いから。そこで大阪市をなくしてしまえというわけです」

 大阪都構想は過去、橋下市長時代の12年と松井市長時代の15年に2度の住民投票にかけられ、いずれも否決されている。なのに馬場代表がまたまた言い出したものだから、維新支持者周辺からも「民主主義の否定」との声が上がっているほどなのに‥‥。

 伊藤氏に問うと、「いい加減にしろ」との一言が返ってくるのみ。両者共に住民の顔が見えていない点では、結局は、どっちもどっちなのだった。

*週刊アサヒ芸能7月7・14号掲載

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