コロナ禍の3年で店舗数を10倍以上に急増させた「無人の餃子販売所」は、コロナの5類分類以降は失速が伝えられていたが、ここに来て閉店ラッシュに歯止めが効かなくなっているという。
「無人の餃子販売所は2020年に100店超程度でしたが、23年には1500店に迫る勢いで急成長を遂げていました。備えつけの冷凍ケースから商品を取り、料金箱にお金を入れるだけで商品を購入できることから人との接触が避けられ、気軽に買い物ができるとコロナ禍に注目を集めましたからね」(フードライター)
出店する側も人件費を抑えられ、冷凍ケースを置ける場所さえあれば出店できるなどメリットが多かったことから、街のあちこちで見かけるようになった。
「ただ、同業態の1つ目の落とし穴は予想以上に窃盗被害が多かったことでしょう。商品を全て奪うなどの大胆な犯行も多く、無人という急所を完全に狙われてしまいました。そもそも無人の餃子販売所では、近くにスタッフがいなかったり、防犯カメラ映像を常時確認する状態になかったりと、防犯意識が薄いところも多かったとされます。結局、監視役を置いたり防犯設備を整えるなど新たな投資が必要となり、利益率の低下で閉店せざるを得ないところも出てきてしまったのです」(経済ジャーナリスト)
さらに、冷凍餃子業界には大きなライバルがいたことも見落とされていたという。
「無人の餃子販売所の2つ目の落とし穴は、冷凍餃子の絶対王者である味の素冷凍食品の『ギョーザ』が強すぎることもありました。同商品は22年に販売50周年を迎えた大定番商品ですが、東京五輪では外国人選手たちが相次いで絶賛したことで改めて注目を集めました。今年2月にもライパンへの張りつきを改善してリニューアルされましたが、常に改良を繰り返してより美味しく、作りやすい餃子が、300円以下で購入できる。無人で販売されている冷凍餃子は基本的に1パック(30~40個入)1000円と決して安くはなく、物価高が続く中で単品で年間200億以上を売り上げるという味の素の冷凍ギョーザにはなかなか勝てないということです」(同)
餃子の無人販売所は今後も衰退の一途をたどっていくのかもしれない。
(小林洋三)