佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」定期預金の〝銀行間金利戦争〟が勃発「1~3年もの」の短期が賢い

 今、日本の景気は08年のリーマン・ショックと同じくらいに低水準だという。その最大の理由は、GDPの6割もの個人消費が伸びないから。当たり前だよ、給料が上がらないんだからね。

 それでも「お金を使ってほしい」と定額減税までやってみたところで、多くの人が貯蓄に回すという。それもよくわかる。何しろ生活が追い込まれているんだから、ちょっとでも贅沢だって思うことはできない。

 税金でお金をバラまくのではなく「給料がまともに上がるような経済政策をする」ことが最も大切だということを政治家はわかっていない。

 そんな中、日本の長期金利が13年ぶりの高水準になっている。長期金利というのは1年以上のお金の貸し借りをする時に使われる金利のこと。特に取引も多い「10年もの」の金利が1%を超えた。6月には1.1%まで上がったのだ。

 別に「10年もの」だけではなく、1年以上の金利は総じて上がっている。そのため、今年の夏の定期預金はちょっと様相が変わってきた。銀行間の金利競争が始まっているのだ。

 中でも多いのが「5年もの」で年0.5%の定期預金というもの。これまでの金利は0.003%ほどで、ほとんどゼロ金利だったので、随分よくなったと思うかもしれない。だが私なら、そんな5年といった長い期間の定期預金をわざわざ0.5%の金利で預けるようなことはしない。これから金利は上がるからだ。

 今は1年から3年くらいの短い期間、できれば1年の定期預金で高い金利のものを探す方がいい。1〜3年ものにして、満期がくる頃にはさらに金利も上がっているはずだから、高い金利のものに預け替えるという方法である。ネットなどで探せば「1年もの」の定期預金でも金利が年0.4%から0.5%なら簡単に見つけられるだろう。

 定期預金は日本の預金保険制度に守られている。とはいえ預ける際には念のため確認してほしい。預金保険機構の保証があれば、元本と利息について1人、1金融機関1000万円まで保証されるので安心だ。

 対して国の制度の保証がつかない金融商品だと、もっと高い金利のものもたくさんもある。この夏の注目は「社債」だ。社債とは銀行ではなく、会社にお金を預ければ約束された利息をもらえるというもの。ただし、会社が倒産した場合は、元本も利息も返ってこなくなることがあるから、潰れそうにない会社を選ぶのが大切。どこで情報を得られるかというと、証券会社がもっぱらだ。

 この記事が出る時には、すでに締め切られているのだが、例えばこの夏は次のようなものがあった。

「東北電力株式会社」が6月に募集した社債は10万円単位で申し込めて、3年間で金利は年0.75%。東北地方の電力を担っている安定感抜群の会社で、倒産の危険性はほぼない。それでいてこの高金利なのだ。

 1%未満の数字に「なんだ」と残念に思った方には少し長い期間では、「ソフトバンクグループ株式会社」の無担保社債を紹介したい。こちらも6月に募集され、申し込みが100万円からと少しハードルは高いが、驚くのはその金利。何と年3.03%なのだ。期間は7年と長いけど、ソフトバンクグループは、こうして集めたお金で様々な投資をしているわけだ。

 わかってもらいたいのは、ソフトバンクグループのような日本を代表する会社の社債でさえ、7年間のお金を借りるためには3%以上の金利を払わなくてはならない時代が到来していること。

 読者の方や、そのお子さんなどがこの10年余りにマイホームを買い、そのローンを変動金利で借りている場合、もうすぐ金利上昇に悩む日々がやってくるのではないかと心配している。何しろ「10年もの」の固定金利の住宅ローンなどは、すでに金利が上がり始めているからだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。新刊「つみたてよりも個別株! 新NISA この10銘柄を買いなさい!」(扶桑社)が発売中。

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