金価格が高騰 背景にあるのは中国人の「金は最大の武器」な遺伝子

 金(ゴールド)が歴史的な高値をつけるなかで、「いったい誰が買っているのか?」との声が噴出している。

 金先物の国際指標となるニューヨーク先物(中心限月)は1トロイオンス(約32グラム)2300~2400ドルと、2月末終値と比較しても約1割高く、4月上旬には8営業日連続で最高を更新し、一時2500ドルに届く勢いだった。

 もともと金上場投信(ETF)は、欧米機関投資家の投機資金の流入で価格を形成してきた。ところが、米国の長期金利が高止まりしているため、機関投資家が金利を生まないETFから資金を引き揚げていた。そんな投機買いが減少している中で金が急騰していることもあって、冒頭で伝えた「誰が買っているか?」が注目されるわけだ。

 その答えは、「中国」である。中国人民銀行は米中関係の悪化に備え、早くから金の保有量を増やしているが、ここ1年は突出している。貿易取引でドル決済を減らし「元」の経済圏を広げたいという思惑があることは言うまでもないが、そもそも米国経済の好調がいつまでも続かないと見ており、金を保有することで「元」の国際通貨の地位を守るというのが本音である。

 また今回の高騰劇で見逃せないのが、中国の個人による金買いである。中国経済は不動産破綻に象徴されるように、改革開放以来の経済不振に陥っている。富裕層はもちろん、中間層もそこに届かない国民も一斉にマンション投資に走り、株が良いとなれば株に全力を注いできたが、14億の中国人が資産の下落になすすべをなくしている。

 ところが、ここへきて資産の目減りに悩んでいた中国人が金の価格上昇に目をつけ熱狂しているのだ。同好の仲間が集まるネット上の「金友」とか「貯金友」には、毎日「金を何十グラム買った」「数百元儲けた」「数千元儲けた」という投稿が載っている。

 元来、中国人は金を最大の「お宝」としてきた。清王朝が倒れ辛亥革命が始まると、資産を金に換えて生き残った。また、毛沢東が1949年に建国すると、資本を悪として資産家を追放したため、庶民は金目の物を「金」に換え泥壁や土間に埋め込んで守ったほど。

 要は中国人は、「金が資産を守る最大の武器である」という遺伝子を持っているのだ。経済が破綻に追い込まれたとしても、民間が貯め込んだ「膨大な金」が中国を救う助けになるかもしれない。

(団勇人・ジャーナリスト)

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