東京-新大阪、名古屋などの主要駅間の回数券販売が廃止された。加えて首都圏の主な鉄道やバスの回数券も廃止。百貨店の商品お取り替え券などもなくなった。庶民の味方の金券ショップは今後、どうやって生き残っていくのだろうと思っていたら、どっこい次のメイン商品を見つけていた。株主に渡される株主優待券だ。これが金券ショップに流れてくる。
私が月に一度くらいのぞきに行く新橋駅前のニュー新橋ビル1階や、新宿の大ガードにある通称ションベン横丁の飲み屋街に隣接する金券ショップ街は、東京でも様々な金券を扱っている。とりわけ5、6月と11、12月は、とてもお得な月。株主優待券の有効期限を月末に迎える商品が少なくなく、期限が過ぎて紙切れになってしまう前に、安く売っ払われるからだ。
私が注目するのは主要鉄道が株主に配布する無料乗車券。これらは1回なら、どんなに長距離を乗っても無料ということが多い。そして5月末に期限を迎えるものが少なくない。
例えば西武鉄道、東急電鉄、京成電鉄、京急電鉄、小田急電鉄、京王電鉄などだ。これらの有効期限は5月末と11月末。東武鉄道は6月末と12月末だ。
無料乗車券の価格は需給によって毎日のように変化する。例えば池袋の金券ショップでは、東武鉄道や西武鉄道の無料乗車券は新橋よりも高い。ただし、西武鉄道は新宿と池袋の金券ショップではそれほど価格は変わらない。というのも西武鉄道は、池袋発だけでなく、西武新宿駅もあるからだ。
では、肝心の価格はどのくらいだろう。4月の前半に調べてみた。期限が1カ月以上あるのでまだ安くなく、通常価格ではあるが、西武鉄道が470円、東急が280円、京成が900円、京急が530円、小田急が550円、京王が390円、東武鉄道が820円という具合だ。
コロナの時には移動する人もいなかったので、価格はさらに安く、6月に入ってからの東武鉄道は極端に安かった。確か私が買った時は500円以下、往復で2枚買って小学生の時以来の東照宮など日光観光に行った。ちなみに浅草から東武日光までの電車賃は片道で1400円だ(スペーシアXなどの特急に乗った場合は、特急料金が別に必要となる)。
もう一度言うけど、東武鉄道は有効期限が6月末なので、6月に入ってから安くなるのだが、今でも十分魅力的な価格である。
5月のオススメはなんといっても秩父のある西武鉄道、小田原の先に箱根のある小田急、いや、成田山新勝寺の京成もいいし、京急で三浦半島の海の幸を求めて旅行するのも悪くない。
池袋から西武秩父までの乗車賃は片道800円。5月に入った今なら、4月に調べた時よりもさらに安くなっているだろう。GWにどこも行けなかったという方はこの5月、日帰りでちょっとした旅行を安く楽しむのはどうだろう。
目的地を決めずに金券ショップに行った際、いくつかの候補中から特に安くなっているところを縁だと思って買うのもいいかもしれない。きっと今年も5月2週目以降から、どんどん安くなっていく。ただし、4週目に入る頃には、すべて売り切れになっていることもあるので、注意しよう。
ただね、こんなこともあった。去年の6月末日、たまたま新橋の金券ショップに行ったら、その日まで有効の株主優待券があった。それは映画の鑑賞券で、たったの200円。観られる作品を調べたら、その日が公開初日の「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」。ということで、たった200円で最新の話題映画を観たというわけだ。
映画鑑賞券は6月や7月の期限のものが多い。まあ、そういうわけで5月から7月までの月末近くは、金券ショップさんのバーゲン日なのです。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。新刊「つみたてよりも個別株! 新NISA この10銘柄を買いなさい!」(扶桑社)が発売中。