銅線ケーブルでは済まない!? 線路、鉄橋も標的にする金属窃盗の被害実態

 日本各地で銅線などの金属窃盗事件が相次いでいる。埼玉県警は8日、太陽光発電所から銅線ケーブルを盗んだとして、カンボジア国籍の男2人を窃盗容疑で再逮捕(すでに入管難民法違反などで起訴)したと発表した。発表によれば男たちは今年3月22日、県内での交通違反の取り締まりに引っかかり、車内から長さ1600メートル(750万円相当)に及ぶ銅線が発見されたというのだが…。

「県警の調べに対し、2人は他の仲間と共謀し、三重県多気町の太陽光発電所で銅線ケーブルを盗んだと供述。調べを進めると犯行場所は三重だけでなく栃木や千葉、福島など6県に及び、そこで同様の銅線ケーブル窃盗を23件も繰り返していたことがわかった。男たちは『自分の生活費や母国の家族に金を送るために盗んだ』としていますが、被害総額は6800万円を超えるとされ、すべて知人の日本人を通じて業者に売却していたと供述しています」(社会部記者)

 警察庁によれば、去年1年間の全国の金属窃盗の認知件数は1万6000件。これは前年を6000件上回る数字で、最も被害が多かった茨木県の3000千件に次ぎ、千葉県や栃木県、群馬県、埼玉県などで1000件を超え、北関東を中心に被害が広がっているという。

 実は、銅線などの金属窃盗は日本だけの話ではなく、欧米でも深刻な社会問題になっている。世界の犯罪に詳しいジャーナリストが解説する。

「銅や鉄、アルミニウムといった金属窃盗の背景にあるのは価格の高騰ですが、特にここ数年、銅の価格はどんどん上昇し、5年前に比べると価格は約30%もアップ。そのため、日本では、これまで銅線やマンホールのふた、銅像、ガードレールなどが盗まれてきましたが、世界レベルはこんなものじゃない。米オクラホマ州のラジオ局では今年1月、内部の銅を盗むために電波塔が切り倒され、放送できなくなるという事件が勃発。2月にはドイツで、マンハイム中央駅とラムパートハイム駅間の一部線路が盗まれる事件が起こり、運休を余儀なくされる事態に陥った。またインドでは、長さ18メートルで500トンもある鉄橋が、行政職員を装ったグループにより3日間かけて解体され、運び去られるという事件も起こっていて、言い方は変ですが日本とはスケールも桁違いです。ただ、このまま金属の価格が高騰していけば、日本でも同様の犯罪が起きる可能性は否定できませんね」(同)

 鉄道や放送施設など、生活に不可欠なインフラそのものを標的とするのが、金属窃盗事件の恐ろしいところだ。

「イギリスでは4日間で160カ所のマンホールが盗まれる事件が発生し、交通網がマヒしたこともあります。となれば、どこかで災害が起こった場合、あるいは事故でけが人が出ても、現場に駆け付けること自体が困難になるケースも出てくる。つまり、インフラを破壊する金属盗難は、そのまま人命にかかわる事態に発展するということ。もはや日本においても、対岸の火事などとは言っていられない状況だということです」(同)

 日本に「水と安全はタダ」などという神話があったのは昔の話。インバウンドで浮かれる前に、そんな神話が完全に崩壊していることを胸に刻むべきである。

(灯倫太郎)

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