これは防げない!?高級車200台窃盗犯のハイテク手口「CANインベーダー」とは?

 ここ数年、電子キーが発する電波を中継、増幅して車を盗む「リレーアタック」と呼ばれる手口により車の盗難が相次いでいるが、さらに簡単で迅速、しかも防止が難しいと言われる「キャンインベーダー」という手口で、高級車の窃盗を繰り返いていた男2人が逮捕、送検されていたことが先月31日、兵庫、埼玉、千葉の3県警の発表で明らかになった。

 社会部記者が解説する。

「窃盗などの疑いで逮捕、送検されたのは、堺市の会社員の男(38)とさいたま市に住む無職男(43)で、2人は2016年4月〜21年2月までの間、高級車レクサスなど計192台の窃盗に関わったとみられ、その被害総額は9億5000万円。今回はうち5件(計約2800万円相当)を送検し、2件(計約740万円相当)について起訴していますが、調べに対し2人は『遊ぶ金や生活費が欲しかった』と、起訴内容を認めているので、全容解明は時間の問題といえるでしょう」

 わずか5年の間に高級車ばかりを200台近く盗み、10億円近い金を荒稼ぎしていたとは驚くばかりだが、自動車盗難事件の場合、そのカギを握るのが「時間と音」だと言われる。

「駐車場でも、ガレージでも、盗むまでに時間がかかったり、不審な音がすれば、通報されるリスクが高くなる。リレーアタックの場合も、電波を中継するまでに時間を要し、途中で見つかるケースも少なくありません。ところが、キャンインベーダーは、モバイルバッテリー型の小型機器を車に接続して、『CAN』と呼ばれる制御システムに侵入し、それを不正に動作させ、ドアロックを解除してエンジンを始動させて車を盗むため、犯行にかかる時間はほんの数分で済む。逮捕された2人は車のフロントバンパーを外し、ヘッドライトの裏側にコードを接続し、CANを操って解錠、エンジンを作動させて盗みを繰り返していたとされますが、被害者の多くが全く物音に気付かなかったと証言していますからね。犯行がごく短時間で行われていたことは間違いないでしょう」(前出の記者)

 2人は県警の調べに対し、「機器は知り合いから約200万円で買った」と供述しているが、報道を受けSNS上では、《200万円で買えるなら、模倣犯がどんどん出てくるのでは?》《某新型高級車の指紋認証も発売前に破られたし、デジタルに頼ると簡単にデジタルで破られるということか》《いくら高度になっても必ずそれを解析する人が居る。結局はいたちごっこだな》といったコメントで溢れた。

 前出の記者が語る。

「CANはエンジン制御や故障診断などに使われるシステムなどで、車の内部に張り巡らされています。ただハイテクと言えど、しょせんは機械なので何らか方法で悪用されれば全てをコントロールされてしまう。そして、技術が進歩すればハッカーも進歩し、後出しで解析できるハッカーの方が有利。盗難を防止するためには、頑丈なタイヤロックで固定するなどの対策が必要になってくるわけで、最後はやはりアナログかもしれませんね」

 ハイテクで制御された車はローテクで守る! 近々、そんな時代がやってくるかもしれない。

(灯倫太郎)

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