CO2を輩出しない環境に優しいエネルギーとして、今や我々の生活に欠かすことのできない太陽光発電。経済産業省が昨年発表した2022年度の電源構成に占める割合は9.2%で、火力発電(72.7%)に次いで2位。発電実績はすでに原子力発電(5.6%)を上回っている。
実際、2010年代に入ってからは太陽光発電所の数が急増。発電所データーベースサイト「エレクトリカル・ジャパン」によると、その数はなんと1万4420カ所。だが、そんな太陽光発電所を狙った組織的な窃盗事件が最近増えており、大きな問題となっているのだ。
警察庁が発表した23年に全国で起きた金属窃盗の認知件数は1万6276件。前年の57%増で1日に45件も発生していることになる。
窃盗犯罪事情に詳しいライターは、その背景について次のように分析する。
「目当てはパネルではなく、その裏に張り巡らされたケーブルの中にある銅線です。実は、銅相場が世界的に高騰しており、出所を探らずに買い取る業者も多い。だから、現金化が容易なんです」
使用される送電用ケープルには1㎏1000円前後の高値で取引されるものもあり、施設の規模によっては1カ所から数十万円や100万円相当以上のケーブルを盗み出すことも可能。外国人による組織犯罪のケースが多いと見られ、数名1チームで一晩の間に複数の発電所に忍び込むと言われている。
「太陽光発電所は市街地から離れた場所にあることが多いですし、パネルの下なら周囲からも姿が見えにくい。しかも、防犯カメラを設置していても死角が多く、空き巣や自動車の盗難に比べればハードルが低いと言われています」(同)
警察庁では5月13日に各都道府県警の刑事部長を集めた会議が開かれ、取り締まりの徹底を求めるも人手が足りているとはいえず、巡回などを強化しても限度がある。今や供給量第2位の重要なエネルギーとなった太陽光発電だが、さらなるシェア拡大には窃盗対策という大きな問題が立ちはだかっているようだ。