開催延期の声も挙がっている「大阪・関西万博」の運営主体である日本国際博覧会協会の会長を務めるのは、「財界総理」とも言われる十倉雅和・経団連会長だ。
ところが、同氏の出身母体である「住友化学」が、未曽有の経営危機に直面しているという。十倉氏は住友化学の会長でもあるが、同社は、昨年度の業績予想を下方修正し、最終的な赤字が過去最大となる3120億円となると公表したのだ。
「赤字の大きな要因の1つは、2019年に買収した英国企業が医薬品事業で約1800億円の損失を計上したこと。もう1つの要因は、サウジアラビアの国有石油会社との合弁会社『ペトロ・ラービグ』が中国の景気低迷や市況悪化などで不振のどん底に陥っていることです」(経営アナリスト)
ラービグ社は2009年に操業を開始。ガソリンなどの石油製品、ポリエチレン等の石化製品を製造する。現社長・岩田圭一氏の2代前、米倉弘昌元社長が旗振り役だったとされる。
「そして、ラービグ社の事業をさらに拡大させた時の社長が十倉会長でした。2012年に総事業費の大幅増強を決めて、石化製品の生産能力を倍増させました。ところが、結果として、これが住友化学の傷口を拡げたとも言われているのです」(前出・アナリスト)
当然ながら、十倉会長の言動には注目が集まっていた。そして、そんな中、十倉会長は4月3日、能登半島地震の被災地を視察したのである。
「震災復興と万博を両立させる、というのが十倉会長の持論ですが、視察の際、十倉会長は、『万博もあります。(万博を訪れた人たちが)足を伸ばせば能登にも行きますので、復興のアクセルになれば』と語ったのです。ところが、この発言に、『万博への莫大な公費や労働者、資材の投入をやめて被災地に回した方が復興に繋がるのでは』という批判があがってしまった。住友化学の窮状もあり、十倉会長のリーダーシップに疑問符がつき始めた、と指摘する声もあるほどです」(全国紙記者)
これらの難題をどうさばいていくのか、十倉会長の手腕が注目されるのである。
(田村建光)
*写真は十倉雅和経団連会長