中国の若い世代で、お金を貯めることを趣味にする人と仲間になる「貯金友」なる交友関係が人気になっている。
「貯金友」とは、もともと「一緒に麻雀やカードをする人」という意味の「塔子(ターツ)」から生まれた言葉で、他人以上、友達未満の関係と理解すれば分かりやすい。
若い世代にとって、今の中国の就職事情は「超氷河期」と呼ばれるほど厳しい状況にある。倒産の心配がないとされた国有企業でさえ合理化され、財政が豊かだった大都市の市政府すら賃金削減が実施されている、失業者はむろんのこと、安定した職に就いている若者も、将来、どんな苦難に出会うか不安の種が尽きない。そのため、貯金や資産の運用を効率よく行い生き抜くため、仲間を募って知恵を生かそうというのだ。
人気の「貯金友」には二つのスタイルがある。一つはお金を増やすことを目標としている若者がメッセンジャーでグループを作り、毎日貯金を増やしたか、決まった額を貯金できたか、などと確認し合い、あるいはお金を増やした方法を公開して、お金に関する能力を高めるというもの。
もう一つは、信頼できる家族や親族などを「貯金友」のリーダーにして、資金をリーダーの口座に集め大型の資産運用を図る方法だ。
もともと中国人はお金に関する感覚が鋭く、世界史的に見てユダヤ商人と比較されてきたほどその能力は高い。これは4000年の遺伝子がもたらした才能と言っていい。
社会主義国家となって資産家が追放された中国で、1980年に実質的に「改革解放」が始まると、中国人はカネ儲けに目覚めた。
記者が1990年代に初めて中国を訪れた時、息子が日本へ出稼ぎに行っているという初めて会った50歳近い女性から、団地で1人暮しする老婆の部屋を一緒に買い取ろうと誘われたことがある。
毛沢東時代に国民に支給した5~7階建ての古くて狭い住宅が都市再開発で、高騰することを見込んだ自分のモノにする狙いで、金額の不足分を日本人の私に出させようというものだった。
後で知ったことだが、この女性はこうした手口で古い住宅を買ってボロ儲けをし、1990年代の半ばに今でいう「億万長者」になっていた。
ごく一般的に言われるのが、中国人は「カネは命」と考えているということだ。「カネより命」と考える日本人とは真逆である。
つまり、中国人は幼児の段階で、お金が大事なものであることを叩きこまれる。一方、日本人は、少なくとも昭和世代までは「お金を口にすることは卑しい」と教え込まれた。カネのために友人を作る、はあまりに歪んだ考えだが、日本人も少しは金銭欲に素直になるべきか。
(団勇人・ジャーナリスト)