一流メーカーのペットボトル入りの500ミリリットルのお茶が1本40円で1箱1200円、ミネラルウォーターは1本27円で1箱800円、詰め替え用の液体洗濯洗剤は1つ120円で、1箱12個入りで1440円。
SNSを利用していたら手が滑ってクリックしたのだろう。パソコンのモニター画面いっぱいに広がった広告に、べらぼうに安い商品の通販が出てきた。うれしくなって、これは3箱、こいつは2箱と選んでいったら、合計金額1万円ほどになった。
氏名や届け先、クレジットカードの番号や有効期限などを次々と入力し、最後の確認画面で手が止まった。送料はたったの300円。送料が安かったから手が止まったわけではない。300円の送料が国際配送料となっていたからだ。こんな重たいものを外国から送ってくるのか?
画面では「売り切れの場合、申し込めないこともあります」と、決済をせかす文字がチカチカ点灯。購入をストップし、運営会社などを調べていくと、代表者の名前はカタカナ表記、通常の日本の通販会社なら使わない表現も散見された。サイトに使われているロゴデザインも有名小売店でおなじみのもの。おそらく盗用だ。まともな会社ではない。疑念は山ほど高まった挙句、購入をヤメた。
決め手となったのは、この通販サイトの広告が出たSNS。あえて名前は記さないが、このSNSは世界を代表する1つだが、詐欺サイトを放置することでも有名だからだ。
よく見たのが「〇〇デパート閉店のため、有名ブランド在庫一掃セール」とうたって、ヨーロッパや日本の人気ブランド商品を8割~9割引で販売するもの。クリックすると通販サイトに誘導されるのだが、セールス文句通り有名デパートが閉店したとしても、そこに入っている一流ブランドは店舗を借りて営業していただけ。なので8割~9割引で在庫一掃セールをデパート側がすることは通常考えられない。
高級ワインの8割引や、超高級ブランド牛肉の破格セールというのもよくあるが、最近多く登場しているのが、新NISA絡みの投資にまつわるもの。ジャーナリスト、評論家、経営者など、様々な有名人が「投資で確実に100倍儲かる銘柄を教えます」などと、庶民の切なる思いにつけ込む詐欺まがいの広告が横行しているのだ。
投資クラブなどという表記を使ったものもある。連絡を取るとLINEなどに誘導され、勝手に使った有名人の顔写真、AIで作られた偽動画などまで用いて、まるで有名人本人が運営に絡んでいるかのように思わせる。
すっかり信用してコンタクトを続けていると、有名人本人は忙しいからと、アシスタントを名乗る人物が登場。そしてたくみに金品を巻き上げたあと、最後は音信不通になる─。
メディアに登場していた人は「老後の資金を巻き上げられました」と、涙ながらにインタビューに答え、「そういえば、アシスタントの人の日本語がちょっとヘンだなとは思ったんですけどね」と反省する。
もう一度言うが、これらの詐欺の入り口が超有名なSNS上の広告だったり、投稿だったりする。だからうっかり信用してしまうのだ。そして、こういう手口が、もう1年以上前から続いているのに、SNSの運営会社はそのまま放置し続けていることだ。
確実に100倍儲かる方法なんて決してない。私などはこの表記だけでウソつけ! と思うのだが、騙される人も少なくない。
最近「LINEで佐藤さんとつながってるものですが、ちょっと質問したいことがありまして」とX(旧ツイッター)を通して連絡を取ってきた人がいた。
とうとう私の偽アカウントまで登場している。皆さんもぜひ注意してもらいたい。ネットの世界は、まずは疑ってかかることにするしかないのだろうか?
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。新刊「つみたてよりも個別株! 新NISA この10銘柄を買いなさい!」(扶桑社)が発売中。