派閥のパーティー券のノルマ超過分をキックバックとして受け取っていた裏金問題で、安倍派と二階派の関係者39人が処分され、大物議員の明暗が分かれた。そんな中、いまだ問題はドロ沼化しており‥‥。
裏金議員への処分が甘い、と国民からの不満が噴き出す中、最も重い処分を受けた安倍派の塩谷議員は、下された「離党勧告処分」を不服とし、4月12日現在、再審査を請求している(その後却下)。
「同じ処分内容の世耕弘成議員(61)が早々に離党したことに比べて、塩谷議員は『事実誤認のまま処分された』と不満タラタラ。背景には、他の安倍派議員に対する処分の軽さ、また自身の不記載額が234万円と比較的少額ながら、安倍派座長であることを理由に処分された経緯があります」(政治部デスク)
もちろん国民にはそんな言い訳は通用しないが、「自分だけがスケープゴートになっている」という恨みが見て取れよう。
同じ安倍派幹部でも、前政調会長として存在感を発揮する萩生田光一議員(60)は、不記載金額が処分議員中第3位の2728万円。しかしながらその処分内容は、1年間の党役職停止という、極めて軽いものだ。なぜここまで差がついたのか。永田町関係者が眉をひそめる。
「結局、塩谷と世耕は〝トカゲのしっぽ〟。塩谷は21年の衆院選では小選挙区で敗れた比例復活組だし、世耕も参院のまとめ役といえど、亡くなった参院のドン・青木幹雄ほどの力もない。それに比べて萩生田は安倍派の若手議員を掌握しているし、同様に金額は大きくても処分が軽かった武田良太議員(56)なんかも二階派の後継者だからな。離党勧告の2人は、『こいつらなら首を切っても問題ない』と軽く見られたんだよ」
党内での多数派工作などを見越し、パワーバランスに基づく「恩赦」を受けたとしか思えない処分内容になってしまった、というのが真実のようだ。
しかしその結果、党内からはこんな声も聞こえてくる。匿名を条件に、自民党中堅議員が語る。
「総理を含め上層部に異議申し立てを続ける今の塩谷さんは、いわば手負いの虎ですよ。キックバックは、安倍さんが亡くなる前に散々『やめろ』と派閥の議員に忠告していたにもかかわらず、これだけ蔓延していた。絶対に『まだ続けるぞ』と言った首謀者がいるはずです。それが森さんなのか、それとも今回処分された中にいるのか‥‥」
死なばもろとも。特攻精神で、爆弾証言が飛び出す可能性も否定しきれない。議員が続ける。
「裏金のキーマン暴露に、党内は戦々恐々としています。名前を出されたらその議員の政治生命は終わりですし、党がロクに調査もせず処分を発表したことも明るみに出てしまいますから」
不透明な「岸田裁き」のハレーションが、そのまま自民党の崩壊につながっても不思議ではないのだ。
(つづく
*塩谷氏の画像は自民党HPより