本来は二人三脚で政権を運営するはずの総理と与党幹事長。しかし、内閣支持率が3割を切った昨夏頃からスキマ風が吹き始め、現在は修復不能なほど決裂していたのだ。
安倍晋三元総理の国葬やLGBT法など、厳しい選択を迫られてきた岸田政権にあって、総理を補佐してきた茂木敏充幹事長(68)だが、腹の内で含むところは多々あったようだ。
「支持率が危険水域に入ってもなお、裏金問題や解散総選挙の相談すら幹事長である自分を外して行う岸田文雄総理(66)に、茂木幹事長の不信感は募るばかり。特に、一枚岩ではない自派閥を苦労してまとめていただけに、年初の派閥解消騒動は決定的でした。今は『泥船に乗りたくない』という一心だと思います」
そう語るのは、永田町事情に詳しいジャーナリスト・鈴木哲夫氏。現政権は、両者と麻生太郎副総裁(83)の「三頭政治」で船出したが、岸田総理の目に余るスタンドプレーの結果、信頼関係はガタガタに崩れていた。政治ジャーナリストの青山和弘氏が後を引き取る。
「私の取材では直近でも、『岸田総理が茂木幹事長を更迭する』という話がありました。総理は24年度予算案の年度内成立を確実にするため、3月2日までに衆院を通過させたかった。みずから呼ばれてもいない政治倫理審査会にまで出て一定の説明責任を果たしたとして予算を通過させようとしました。しかし、茂木幹事長は水面下で立憲民主党の岡田克也幹事長(70)と、『4日でもいい』と握っていたというんです。これに岸田総理が激怒しました」
これに対して、麻生副総裁が、
「国会途中で茂木だけを代えるのか? 党紀違反をしたわけでもないし、瑕疵がないじゃないか」
と〝鶴の一声〟を発令、岸田総理も矛を収めたという。しかしそれで不和が解消されたわけでは全くない。青山氏いわく、茂木幹事長は番記者らに向け、ことあるごとに、
「総理は信用できない」
「何があっても次の総裁選には出る。このことは麻生さんも了解している」
とこぼしている。一方の岸田総理も周辺に、昨年から講演などで、経済政策や学校給食の無償化について総理を差し置いて発信する茂木幹事長のことを、
「この国は総理大臣が2人いるみてえだなあ」
と不快感を露わに。さらに予算案の一件を指して、
「茂木は俺を追い落とそうとしている」
とまで語っているというのだ。
対立は裏金処分問題にも波及した、と語るのは、ジャーナリストの山村明義氏である。当初、処分内容の調整を行っていたのは茂木幹事長だったが、
「塩谷立議員(74)に除名処分を出す、という腹案があったのですが、森喜朗元総理(86)にお伺いを立てたところ、それは却下された。そこで岸田総理が横から出てきて、塩谷議員の『離党勧告処分』を決めたのです」
一般社会でいえば、除名処分は「クビ」で、離党勧告は「辞職」と、ニュアンスに大きな差が出てくる。岸田総理は幹事長の仕事を最後にかっさらって、手柄だけ自分のものにしようとした、とも取れるのだ。とはいえ、茂木幹事長もただやられっぱなしなわけではない。青山氏が言う。
「処分対象を不記載額500万円以上で線引きしたのは、茂木幹事長。有り体に言えば、若手議員を取り込む一策です。最近は夕方になると早々に党本部を出て、安倍派などの若手議員と飲みに出たりと、多数派工作に腐心しています。完全に『総裁選シフト』を敷いていますね」
仁義なき党内バトルの勝者は、今秋の総裁選で明らかになるのか––。
(つづく)