消費税減税公約ができず、関税問題で大票田を失う…参院選前に石破首相が陥った「三重苦」

 夏の参院選を前にして、石破茂首相が「三重苦」に陥っている。政治アナリストが言う。

「石破政権にとってやっかいなのは、立憲民主党の野田佳彦代表が消費税減税に方針を転換したことです。野田氏は、自身が2012年の首相時代に消費税の引き上げを決めたこともあり、これまでは立民内にこだまする減税大合唱に耳を貸さなかった。しかし、コメやガソリンなどの物価高が庶民を直撃する中、国民民主、日本維新の会などが消費税減税を参院選の公約に掲げて支持率を伸ばした。そのため、野田氏も立民内の声に従わざるを得ない状況になったのです」

 野田氏は「1年限定で食料品消費税ゼロ%」を打ち出したのだが、この決断に頭を抱えているのが石破氏だという。

「自民内でも改選参院議員を中心に、『消費税減税を公約にしなければ勝てない』という声が高まっています。ただ、石破氏は、野田氏は消費税アップの張本人だけに減税を公約に掲げないだろうと踏んでいた。野党第一党の立民が減税公約しなければ、他の野党が吠えても大波とはならず、自民党も減税公約する必要はないと…。それがまさかの大ドンデン返しとなったのです」(前出・アナリスト)

 野田氏が消費税についての石破氏の外患ならば、内憂もある。森山裕幹事長の存在だ。

「森山氏は消費税減税に断固として反対する立場で、『食糧品消費税ゼロ%で社会保障制度の根幹を支える5兆円が消える。そうなれば後期高齢者などの医療費は今の4~5倍になる。財源なき消費税減税は国家を預かる者として無責任』との持論を崩しません」(前出・アナリスト)

 石破政権にとって、与野党に顔が利く老練な森山氏の後ろ立ては必要不可欠。石破氏は、参院選を考えれば減税公約に踏み切りたいが、減税になびけば森山氏との間に亀裂が入ってしまうというジレンマに陥っているようだ。

 ところが、石破氏を苦しめる難題はまだあるのだ。政治部記者が解説する。

「トランプ関税です。日本経済の屋台骨とも言える自動車関税をなんとか軽くしないといけない。しかし、交渉では『交換条件』が必要となる。可能性が取りざたされているのが農産物です。特にカリフォルニア米、ジャガイモ、そして牛肉などの大量輸入。とはいえ、現実化すれば国内農産物は大打撃を受けてしまう。農民票が失われれば、参院選で政権が終わるどころか、自民党にとっても致命傷になりかねません」

 消費税を巡る党内外の苦慮に加え、トランプ氏とのディール…。石破氏はこの三重苦をクリアできるか。

(田村建光)

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