「貧すれば鈍する」とはよくいったものだが、まさかここまで状況が悪化していたとは…。
かねてから向上心のない若者らが労働も消費もせず、横になってなにもしない「寝そべり族」や「まったり族」が社会問題となっていた中国。その理由は、4年制大学を出ても、その半分近くがまともな職に就けないという中国の若者たちが置かれた現実があるとされる。にもかかわらず、3月上旬に開かれた全国人民代表大会では、景気回復に向けた具体的対策がまったく示されなかった。
中国の事情に詳しいジャーナリストが語る。
「中国全土における昨年12月の若者(16~24歳)の失業率は14.9%。ただでさえ仕事がない中、今年の大学新卒者数は過去最多の1179万人になることが見込まれていますからね。当然、職に就けない若者が増えることは必至。昨年中国では『四不青年』という四字熟語が流行語にもなりましたが、これは、恋愛、結婚、子供、家を諦めた若者を意味します。つまり、この言葉に共感が集まったということは、彼らが人生の希望であるこの4つの要素を諦めたということ。そこまで状況は悪化しているということなんです」
結果、中国の主要都市にある「老年食堂」には近年、若者の姿が目立つようになり、高齢者向けのカルチャースクール「老年大学」に通う若者も急増。また家賃が安い「老人ホーム」への入居を希望するケースも増えているというから驚く。
「むろんそれらは基本、高齢者向けの支援ですから、費用は相場の半値以下と格安。倹約したい若者にとってはもってこいの場所なんです。ただ、4年制の大学を出ても、仕事にも就かずバイト暮らしを続けながら、『老人ホーム』に住み『老年食堂』で食事し『老年大学』に通うとなると、最後に待ち受けるのは『寝そべり族』。もはや、出生率云々など言っていられない状況にあるということ」(同)
そんななか中国では今、一獲千金を夢見る若者たちにより、宝くじの売り上げが急上昇なのだとか。中国財政省の統計によれば、昨年度の国が公認する宝くじの売り上げは、過去最高の5800億元(約12兆2000億円)を記録。シンクタンクの調査では購入者の8割超が18~34歳だという結果が出ているという。
「中国で今、『四不青年』のたまり場になっているのが宝くじを扱う店。中国の一部コーヒー店がコーヒー1杯の購入でスクラッチくじを1枚無料で提供するというサービスを実施したところ、店は大盛況だといいます」(同)
いやはや、これではGDP(国内総生産)を上げるなど夢のまた夢と言わざるを得ないが、そうなると、中国に見切りをつけて、海外へ脱出する若者も急増と思われるのだが、悲しいかな、欧米や中東での受け入れ先は肉体労働市場が中心。それでも、すでに若者を中心に25万人を超える中国人がアフリカに移住しているとの報道もある。はたして、この悪化の一途をたどるこの現状を習近平政権は打開できるのだろうか。
(灯倫太郎)