直接投資82%減、外国企業の撤退を招いた中国政府の「支離滅裂」

 中国経済の苦境が一段と深まっている。先の全人代で24年の経済成長率の目標を約5%と発表したが、もはや世界でこれを信じる国はない。不動産業界に始まった経済の混乱は国家統計局がいかに数値を盛ろうが、隠せようがなくなっている。

 香港・上海上場の主要企業の2023年12月期業績の悪化が明らかで、発表出来ない企業が続出しているが、これは24年1~3月期はもっと悪いと想定できるものだ。

 中国政府は底なし沼に陥ったような経済不振に、経済対策を繰り返すが、政府の方針が「支離滅裂」で、世界から「不信」を買っている。中国経済発展の原動力となったのは、改革解放以来40年近くに渡って続いてきた「外資」である。つまり、中国に「外資」が見切りをつければ中国経済は止まったも同然である。

 だから、経済低迷に苦しむ中国政府は3月19日、「対外開放のレベルを上げ、外資導入に一層力を入れよう」と宣言した。こうした宣言をするまでに追い込まれた理由は、外資による中国投資が激減しているからだ。たとえば、2月18日に国家外貨管理局が発表した2023年の外国企業による直接投資は前年比で82%減だった。

 中国はGDPが世界で第二位の経済大国であるが、その経済力を裏つける「元」は外資(ドル)の保有が前提となって「信用」が生まれるのだ。だから、外資の減少は中国経済に打撃となる。それで、中国政府が今や国家を上げて外資を呼び戻そうと躍起になっている。ナンバー2の李強首相を筆頭に、国際会議に出席しては「開放政策の拡大と強化」を訴える一方、自らがセールスマンになって、世界的な外資企業に中国投資を呼び掛けている。

 ところが、理解できないことだが、同じ中国政府が外国企業に中国からの「撤退」を促すような政策を展開していることだ。

 たとえば、昨年の改正反スパイ法の施行だ。これが大きな問題である理由は二つある。一つは、明らかに外国人を対象にしていることだ。二つは、スパイに対する定義が曖昧で、様々な拡大解釈が可能なことであり、しかも「機密情報でない情報」の取得もスパイ行為とみなす、信じ難い条項が織り込まれているのだ。つまり、外資企業が中国で行うビジネス上の情報収集もスパイ活動と摘発される可能性が強いのだ。

 こんな訳の分からない理由で、反中国行為と判断され、拘留される国でまともな企業がビジネスを望むわけがない。繰り返すが、中国政府には経済立て直しのために、外資誘致を呼び掛ける一方で、反スパイ法でビジネス環境の破壊に狂奔する輩がいるのだ。

(団勇人・ジャーナリスト)

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