5月15日~21日の1週間にAsageiBIZで配信し、数多く読まれた記事をBEST8まで紹介する。第7位は、崩壊目前といわれる中国の不動産不況を考察したこの記事だ。習近平政府は約1兆元(約22兆円)の特別国債を発行して、地方政府に売れ残った不動産を買い取らせる計画を発表したが、効果は限定的と見られている。だが、仮に財政破綻したとしても、日本のような長期の経済不況にはならないというのである。(初公開は5月19日)
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中国経済は今、不振の真っ只中にある。
習近平政府は未だに恒大集団や碧桂園を生きながらえさせているが、実態は不動産バブルの崩壊が地方政府に波及し、いつ金融破綻に及んでもおかしくない状況にある。日本の「失われた30年」を超え、中国がひとたび破綻すれば「50年失われる」との報道もある。だが、筆者はそれは“ありえない”と考える。
国家の隆盛と経済は、歴史的に見ても一体である。どんなに隆盛を誇っても、経済の原動力を失えば没落する。例えば、世界の半分を植民地化した英国は世界大戦を機に衰退し、代わって鉄鋼、自動車、石油産業を発展させた米国が世界のトップに躍り出た。覇者は入れ替わるのである。
では、中国経済の原動力は何かというと、かつては「豊富で安い労働力」だった。安い労働力が外国企業を中国に吸い寄せ、経済成長をもたらしたことは周知の事実だ。しかし、現在の中国の“売り”は「豊富で安い労働力」から「豊富で高度な技術人材」に変わった。これは国家が総力を挙げて作り上げてきたものだ。
最先端技術の最たるものは宇宙ロケットだろう。日本はようやくH3が成功し、宇宙開発に向けて扉を開いた段階だが、中国は月探査機打ち上げに成功し、月の裏側に着陸させる段階にある。
そして圧倒的なのが電気自動車だ。米、欧、日は自動車産業で国を豊かにしてきたが、今や中国のEVセールスに脅かされるありさまだ。中国を公害大国と非難してきた米欧の自動車国家が、中国の安売りEVに脅えるあまり、高関税をかけて締め出しを図ろうしている。この勢いのままいくと21世紀の後半には、中国が世界の自動車市場を総取りする可能性さえある。
また、ロボット産業でも中国は急速に拡大している。今や世界一の生産数を誇り、技術的にも日米欧を上回ったと伝えられる。多くの人がファミリーレストランで、配膳する中国製ロボットを目にしているはずだ。
Sumsung、Appleを猛追するスマホメーカーのXiaomi、OPPOや半導体デバイスメーカーもしかりで、たとえ中国の不動産バブルが崩壊して、それが金融破綻を引き起こしたとしても、世界に先んじる他の産業で中国経済は時間をかけずに立ち直ることができるだろう。
未だにマイナンバーカードさえ浸透していない日本人には信じられないかもしれないが、中国では物乞いもキャッシュレス化しており、市民は日々の買い物から航空、列車の予約&乗車までスマホで済ませるほどIT社会が確立している。
もちろん人口減少の問題はあるが、破綻しても何十年も“失われる”ことはないのである。
(団勇人・ジャーナリスト)