五輪後が怖い!?消費増税前に駆け込み需要が発生しない「ヤバい原因」とは

 消費増税まで1カ月を切った9月の頭、菅義偉官房長官、麻生太郎財務相が相次いで前回増税した5年前のような駆け込み需要による混乱は起きていないという認識を示した。

 揃って理由は、景気対策として大型消費財である住宅や自動車の購入で減税措置を施したから。前回引き上げの2014年4月前には住宅、自動車、宝飾品などがどんどん売れて、増税後には反動で消費がガタ落ち、その後ずっと低迷を引きずったという過去がある。この轍を二度とは踏むまいというわけだ。

「ですが、それも裏を返せば消費が冷えているだけだと言えなくもありません。事実、家電はそれなりに売れていますが、スーパー・百貨店といった小売りは伸びていませんから」

 と、政府見解に異を唱えるのは官邸詰め記者。

「当たり前の話ですが、消費の落ち込みを認めてしまえばアベノミクスが功を奏していないという従来の議論に戻ってしまいますからね」(同)

 この増税前夜の怪しい静けさについては様々な見方がある。あるエコノミストはこう指摘する。

「前回の5→8%の3%アップに対し今回は2%アップですから、上げ幅が小さいという要因もあるでしょう。正直『またか』といった慣れもある。また、軽減税率の分かりにくさもありますね。正直、何が上がって何が据え置きなのかよく分かりませんから」

 そして、「一番怖いのはこういった見立てです」とし、こう続ける。

「そもそも駆け込み需要が出て来るような消費者マインドがなかったという見方です。景気は完全に調整局面ですし、そもそも人口減少で社会構造的に消費が腰折れをしている可能性もある。増税後は恒常的な負担増になるわけですから、従来であれば駆け込みに回ったかもしれない需要が貯蓄に回った。実際には今後に出て来る経済指標を見てみないと分かりませんが」

 博報堂が6月に行った「増税前後の意識・行動」に関する調査によれば、前回の増税に比べて負担が大きいと考えている人が70%を超え、負担が大きい理由として「以前と比べて収入が減った/少ないから」との回答が一番多いという結果が出ている。

「増税と同時に導入されるキャッシュレスでのポイント還元も、各社のサービス乱立で一般庶民には分かりにくい。とくに、スマホが苦手な高齢者には還元にならないでしょう。むしろ聞くのは、複数税制に対応したレジの導入の遅れの話ばかり。ただ、政府にとって幸いなのは、来年はオリンピック・イヤーということ。でもその後は果たしてどうなるか」(同前)

 結局は先延ばしということか。

(猫間滋)

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