GoogleとFacebookも被害に!「企業版オレオレ詐欺」に引っかかった日本企業

 9月6日、トヨタ創業者の豊田佐吉が始めた紡績会社をルーツにもつトヨタ系企業の名門、トヨタ紡績がベルギーにある欧州子会社で資金流出の詐欺被害にあったことが報じられた。

 具体的な手口は、捜査情報に関わるために非公表とされているが、なんでも会社外部の「悪意ある第三者による虚偽の指示に基づき資金を流出させた」ということなので、おそらくは架空の取引先への支払いを誘導するなどしたのだろう。
 
「要は、いわゆる企業を狙ったフィッシング詐欺で、『企業版オレオレ詐欺』と言われるものだと思われます。企業が相手なので『ビジネスメール詐欺』などとも呼ばれますが、ここ最近、世界的に被害が多発しているのです」(詐欺に詳しい経済ジャーナリスト)

 FBIが発表したところでは、2013年から18年の約5年間の間で7万8617件の事件があって、1兆3600億円以上の被害が出ているとされる。

 日本でもいくつかの被害報告が出ているが、例えば、誰もが知るイタリアの高級ブランドの日本支社も昨年の10月に被害に遭った。

「その日の早朝、イタリア本国の経理部長のアドレスで『中国での取引で税制上表に出せない金が必要だから、日本支社から送金して欲しい』というメールが日本法人社長の元に届いたんです。イギリス渡航中だった日本法人社長は経理担当部下に指示、その日のうちに2回に分けて約3億8000万円の金額を中国の銀行口座に送金しました。ところがその日の夕方、当の経理部長からそんな指示をしていないとの連絡があり、翌営業日に詐欺だったことが判明。実際に送金させるまでには、スイスのニセ弁護士から連絡があるなど、複数の人間が登場しては騙す“劇場型オレオレ詐欺”とまさに手口は一緒。しかも、最初のメールには、『このメールを読み終わった後は破棄をするように』とあって、スパイ小説さながらです」(同前)

 結果、日本法人社長とその部下は即刻、会社をクビに。人の人生まで狂わせてしまったのだ。

 だが、世界に目を向けるとやはりスケールが違う。しかも、“釣られた”のがあのGAFAのGoogleとFacebookというのだから驚きだ。

「米国法務省が発表したところによれば、リトアニア国籍の男が両社の財務担当者のメールアドレス、取引先企業の請求書フォーマットを詳細に調べ上げた上、2013年からの5年間で数千万ドルの請求を繰り返した結果、計112億円以上を送金させたとされています」(同前)

 ところがさすがはGAFAの2社、被害にあったことは認めながら自ら公表しなかったのは「経営に影響する金額でなかったから」としているのだから、違った意味で感心してしまうほかない。

(猫間滋)

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