高齢化の一途をたどる日本社会を象徴するような事件が起こった。
神奈川県警大和署が、詐欺未遂の疑いで千葉県浦安市に住む74歳の自称パート従業員の女を逮捕したのは3月31日のこと。
事の起こりは、神奈川県綾瀬市内に住む70代の無職女性宅にかかった1本の電話だった。電話の主は女性の長男を名乗る男。男はうろたえた様子で「女性とのトラブルに巻き込まれ、金を払うことになった。助けてほしい」と話し、途中で弁護士を名乗る男にかわると、男から「息子さんから相談を受けています。200万円あれば示談にできます。用意できますか?」との要求があった。
だが、女性は冷静だった。「これは、あのオレオレ詐欺ではないのか?」そう直感した女性は、すぐに所轄署に連絡。通報で駆け付けた捜査員が張り込む中、のこのことやってきたのが、「受け子」役を務める、この74歳の女だったというわけだ。
コロナ禍の中、いわゆる「特殊詐欺」で「かけ子」「受け子」「出し子」といった闇バイトに走る若者が後を絶たない。だが、今回容疑者として逮捕された女が後期高齢者手前とあって、報道を受けSNS上では驚きの声が続出。
《本当に74歳なの?高齢者が高齢者を狙うなんて……世も末だな~》《74歳とは驚き!受け子ができるくらいだから、きっとお元気な方んでしょうが》《凄いなぁ……騙されるばかりではなく騙す側にも高齢化の波がきているってこと?》そして、《どうやって、74歳の女が受け子になったのか知りたい》という声も少なくなかった。
全国紙社会部記者が語る。
「警察の取り調べに対し、女は『荷物を受け取るように指示されただけで、現金だとは全く知らなかった』と供述し、容疑を否認しているそうですが、これは逮捕時のマニュアルにある常とう句。そう考えると、初犯ではなくベテランである可能性もあります。ただ、この手の特殊詐欺グループはたいがい、ツイッターなどSNSで高額給与をうたい『簡単な集金の仕事』『書類等の受け取り』として、リクルートした後、記録の残らない無料通信アプリ『テレグラム』で指示を出すというのが、お決まりのパターン。とはいえ、受け子の場合は、事前に相手とやり取りをする際の想定マニュアルを暗記しなければなりません。だとすると、この女は74歳にしてテレグラムを使いこなし、暗記力も相当なものだったということでしょうか。いやはや、高齢化社会とはいえ、凄い時代になったものです」
SNS上には、《ギネス申請してはどうか?最高齢「受け子」で!》といった不謹慎な声もあるが、所轄署では余罪についても女を追及していくという。
ともあれ、介護だけでなく、詐欺も老々の時代に、などということにならないことを祈りたいものだ。
(灯倫太郎)